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たかが世界の終わりのrimiのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.9
家を離れたルイと、ずっと田舎にいた家族との間に流れた空白の12年はあまりにも深かった。
ルイは死を告げることで、その空白を埋めれるような気がしたのかな。
死ぬまでに残された時間で、自分が育ってきた場所に立ち返り、改めて向き合いたいと思う前向きな気持ちや、過去や家族を慈しむ気持ちは無残にもことごとく潰された。
兄にとってはただのインテリの道楽に見えるだなんて。つらい。
ルイと家族の気持ちにあまりにも温度差があって、死んでしまうことを知らない家族たちから浴びせられる言葉が容赦なくルイをえぐる。
心の内を明かさず、口をつぐむ姿を見るたびに胸が押しつぶされそうになった。
未来を信じる母と、その未来にいない息子の対話も溝があって切なかった。
無関心なんかじゃない、傷つけたくないし、捉え方が違うだけなのにと勝手に思った。
家族の言葉が洪水のように溢れ、フェイドアウトしていくシーンは「こんなはずじゃなかったのに…」とルイが自分を失いそうになっている気がした。
なぜ家族なはずなのに分かち合えないのか?ルイの疎外感と淡い期待が虚しかった。
家に舞い込んできた一羽の鳥が行き場を失って死んでしまい、それを見届けた後にわずかな笑みを浮かべて家を出て行くルイが清々しく見えた。
夏のじっとりとした汗の質感と、家族のドロドロ感の相性もよかった。
家族のもやもやをこんなにもまざまざと見せれるなんて。すごい。
 「自分の居場所と感じられない環境で育った人は、人とつながる自信が持てないように思います。」とドランは言っていた。
ルイに共感するシーンもいくつかあった。見終わってからタイトルが妙にしっくり来た。
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