shinobu

たかが世界の終わりのshinobuのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.1
ドランにしか撮れないフィルムがあると思う。若い時にしか撮れない映画がある。
スピルバーグが激突!を撮ったの25歳くらいだよ。
いま我が国の20代で何人のフィルムメーカーいるのだろうか…と本編に関係ない話に終始するのもアレなんで終わり。

本作は原作はあれど監督、脚本、制作を担当したドランにしか撮れない、ドランの為の映画となっている。

ドラン作品を全て観ている訳じゃないが共通するのはその繊細さである。
終始重苦しく痛々しい描写が延々と続くが本作のキモとなるのは繊細で美しいルイでも美しい風景でもなく、普通のおじさんアントワーヌだろう。ボクにとってはどんな美しい映像より、心象風景より何より兄ちゃんが大事だ。

冒頭、久しぶり実家に帰ってきた次男坊に会うというだけなのに、オシャレをする母と末っ子。
嫌味ったらしい事を言う兄貴…始まって数分で大体の事を察する事が出来る見事なオープニングだ。

嫌味ったらしい兄貴アントワーヌという印象を段々とひっくり返していく描写も見事だと言うしかない。

その嫌味ったらしい性格はどこから来たのか… 段々と人となりを知るたびにアントワーヌに共感してしまう。彼は嫌味ったらしいし、言葉は荒いし酷い。

が…アントワーヌは嘘は言わなかった。

ルイはどうだったか。彼はどういうつもりで帰ってきたのだろうか?普段簡単な絵葉書を送る程度で、何も話さず何も聞かないから何も知らない家族にいざとなると慰めてもらいたかっただけだったのかと。

ルイは兄貴が何の仕事をしてるかも知らない。そんな家族の些細な事は世界が終わる事に比べたら大した事ではないから…

いや、愛する者を失う事の辛さに比べればたかが世界の終わりなんてだ。

ただ…もちろん狙いなんだろが余りにもユーモアがないのがなぁ。
あ、恋のマイアヒは最高だったな。
ルイも最後まで病気のこと言わないし… この家族のどいつもこいつもオープニングから成長したんだろうか。

教訓があるとしたらこんな家族にならないように連絡とりあうか一切取らないかだな。
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