カテリーナ

たかが世界の終わりのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

自分は出演していないドラン作品

「Juste la fin du monde」ラガルスの戯曲をアンヌ・ドルヴァルが『マイ・マザー』の撮影後にドランに勧めたのがきっかけらしい (公式ホームページより)
12年ぶりの帰省の為 真夜中 飛行機に乗り朝方の空港で朝食をとる 作家のルイ
(ギャスパー・ウリエル)の表情が曇っているのは 死期が迫っている事を家族に告げる為だった 故郷の懐かしい家には 母親、兄夫婦、妹が待っている 特に妹は ルイが家を出た時はまだ幼く 記憶が曖昧だ それでも 兄との対面を心待ちにしていた

家族との会話が ぎこちなく続く中 血の繋がりのない 兄の妻 カトリーヌ(マリオン・コティヤール)だけが ルイの横顔の暗い影に気付く その独特なカメラワークは 伏せた目や口元の硬さ 暗い瞳の色で表現する ギャスパー・ウリエルが秀逸 それを受け止める マリオン・コティヤールも変化に気付く繊細な表情を見せる ゆっくりと 時が止まったかのような この場面が 他人同士だからこそ 通じてしまう 共犯的な心の繋がりを窺わせる

愛しい筈なのに 血の繋がりの鬱陶しさが家族の噛み合わない会話から 滲み出てくる それは 不器用で 愚かだけれど 唯一心を許せる 場 として ここでしか成立しないのも確かだが 見てる観客もイライラが募るばかり そして 押さえ込んでいた 感情が爆発してしまう下りでは それぞれが 勝手な言い分を並べ立て お互いの心を傷つけ合う 言葉を浴びせてしまう このすれ違いは自分にも覚えがあり 切実である

感情が爆発した後の誰も居ない部屋で
タイムリミットの時を知らせる鳩時計の音
ひとつ、ふたつ、みっつ ……
すると、部屋に迷い込んできた 小鳥が
壁に激突しながら飛び続け ルイがドアを閉めた後 力尽きて やがて呼吸が止まる
それは この家でのルイの存在が呼吸を止めた瞬間でもあったのだ それは 心に残ってしまった 言葉を飲み込んで故郷を後にするルイの心象風景として 余りにも切ない 同時に愛するが故に分かり合えない家族との もどかしさを痛感した幕切れだった
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