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500ページの夢の束のbeachboss114のレビュー・感想・評価

500ページの夢の束(2017年製作の映画)
5.0
大したヒネリはないけれど、真っ直ぐな展開に好感。

偽善臭のない「裸の大将」みたいな感じかな。泣かそうというあざとさがないのがいい。脇目をふらないひたむきさが自然と共感を呼ぶ作り。

主人公の道行きは「スター・トレック」の未知なるフロンティアへの冒険にも重ねられる。トラブルが起こったら「待機(原題でもあるPlease Stand By)」、迷ったら「前進」、失ったら「一からやり直し」。決して諦めず、投げ出さない。前向きな一所懸命が炸裂するクライマックスの「投函」は、思い出しただけでも泣ける。

いやはや、モノを作る人間は素敵だわ。たとえ日の目は見なくても、そばに読んでくれる誰かがいて、楽しんでくれる誰かがいて、気に入ってくれる人が一人でもいるなら、作り上げる価値はある。

受賞は叶わなくても、作品を仕上げて応募することで少しだけ成長し、取り巻く世界もこれまでとは少し変わって見えるから、生きていくことに希望が持てる。そんなエンディングが清々しい。

それにしても、クリンゴン語による微笑ましい意志疎通のシーンや、落選通知の気の利いたコメントなど、「スター・トレック」というコンテンツの奥深さと影響力には恐れ入るわ。
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