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マドモアゼルのtakのレビュー・感想・評価

マドモアゼル(1966年製作の映画)
2.8
フランスの田舎村で水門が開かれる悪質ないたずらが起こった。閉鎖的な村で疑われるのは、流れ者のイタリア人労働者たち。それらは、都会から教師としてやってきた独身女性の仕業だった。村人に"マドモアゼル"と呼ばれる彼女を疑う者はいない。いたずらは連続放火に発展して、よそ者に厳しい言葉や視線が向けられる。

町山智浩センセイの紹介でトラウマ映画として知られる作品。ジャンヌ・モロー見たさに手を出してみたが、確かにむなくそ悪いという世間の評判は嘘じゃなかった。着飾った装いで水門を開ける不気味なオープニング、イタリア人の少年に教室で厳しく指導する姿、ストーリーが進んでも彼女の真意がますますわからなくなる。少年の父親とマドモアゼルは、森で会話をしてから時折視線を交わすようになっていく。そして嵐の夜に二人は…。

少年は放火現場に残されたノートの切れ端で、マドモアゼルを疑うようになるのだが、決してそれを口にしたりしない。映画後半、マドモアゼルが男との行為に溺れていく様子は妖艶。男と女は理屈じゃないと数多くの映画で学んできたけれど、これは最後まで共感できるところが汲み取れず、ラストはもう人間の醜さと不可解さにモヤモヤした気持ちに。

しかし、そんなミステリアスで、知的で、気品があって、激しく嫌悪の対象になるヒロインを、ジャンヌ・モロー以外の誰が演じられるだろう。そんな女優の凄みが、この映画のむなくそ悪い印象と共に心に残るのだ。
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