「存在の証明」
突撃取材で人気を博していたニュースメディア、VICE社のサムとジェイクは、
妹がカルト教団に出家したというパトリックとともに、その宗教団体のコミニティへ向かった。
ヘリで到着後、数キロ先にある外界から隔絶された施設。
そこに多数の信者が一人の男を崇めながら共同生活を送っていた。
なんとか取材の承諾を得て取材を始めるサム達。
そこで暮らす人々は幸せであるように映った。
一人の少女が、ある事が書かれた紙を手渡すまで。
その紙にはこう記されていた。
「お願い、助けて」と。
■「割と普通だった」
イーライ・ロスが製作って事で、どうしようか悩んでいた作品。
イーライ・ロスやからさ。
監督がV/H/S シンドロームのタイ・ウェストなんだけど、
ちょっと勘違いしてた。
ファウンドフッテージホラーのオムニバス作品であるV/H/Sシリーズやけど、
アレにも同様のカルト教団の集団自殺の作品があった。
最初、アレの長編版かと思ってたけど、どうやらちゃうんやね。
よー考えたら、あれはザ・レイドのギャレス・エヴァンスやったような気がする。
そっちが割と良くできてたぶん、
あれ?普通やん?って感じやった、本作は。
まぁ元々が実際に起きた人民寺院事件をモチーフにしてる分、
そんな摩訶不思議な感じには出来んわな。
そういう意味では、ちゃんと作ってるようで、
ファウンドフッテージホラーにしては、なんか演出も中途半端な感じもあったり。
タイ・ウェスト監督はアダム・ウィンガード監督のサプライズに、
映画監督役で出てたけど、ほんま監督やったんや。
ちなみに、ジョー・スワンバーグ、AJ・ボーウェン、エイミー・サイメッツとサプライズの出演陣。
仲いいなこいつら。
そうなると、アダム・ウィンガード監督もかかわってるんやろかと思いきや、
なんでイーライ・ロスなんやろ。
■「実際に同種の事件があったと考えると」
映画としてはまぁそんな大したことは無いんやが、
実際このような事件が起きたことを考えると、まぁ考えさせられる部分はあり。
なぜ、死を受け入れるほど「信じる」ってどういう事なのか。
死を受け入れさせるほど「信じさせる」ってどういう事なのか。
そのハードルと言うか、スレッシュと気持ちの方向性が何なのか、
その辺りは考えさせられる。
まぁ人は、他者が本当に存在する証明は出来ないけれど、
自分が存在する事は証明できる。
考えている自分が確かに存在するわけだから。
これはあり触れた言葉で、ただ、本当にそうかと言えば疑問がある。
ま、考える事はある事だから存在するのは確かだろうけど、
なんやろ、存在の実感は自己だけで得られるのか。
おそらく、何らかの形で必ず他者を介して、自己の存在を認識し、証明し、
だからこそ生きれるし、だからこそ死ぬこともあるのかもしれん。
この宗教にのめりこんだ人たちは、教祖を介して、
人から存在を認められ、自己を実感したからこそ、
それを失う事に絶望したのか、その先にも認められ続ける自己の延長があると確信したのか、死を選ぶ。
もちろん、周りが一斉に死に出そうとするベクトルに呑まれた所はあってもさ。
教祖は、やっぱり信者を介して自己を確認していたんだろうと思う。
死ぬほど信じてくれる人たちがいて、実際死んでいき、
あぁ、自分はそこまで人から信じられているんだと、数が多ければ多いほど、
深ければ深いほど、さらに自身の存在と価値の確信を深め、
そんな糞みたいな自己愛に陶酔しながらすべてを巻き添えにして死んだんだろうなと。
ただ、それは特別かと言えば、大なり小なり、
形は千差万別であれど誰もが持ってるもんやろう。
自分の存在を実感するために、人を殺し、もしくは自分が死ぬ。
ま、なんとも、矛盾をはらんだ生き物なのかもしれん、人間は。
■「別にそんな高尚な映画でもない」
と、そんな事を書いてはみたけれど、
ま、別にそんな大した映画じゃないので、見る必要はあまりない。