七沖

ヴァレリアン 千の惑星の救世主の七沖のレビュー・感想・評価

4.3
〝宇宙で、ブッ飛べ。〟
千の惑星の救世主というサブタイトルが壮大過ぎて逆にB級感を醸し出している本作。そんな心配は杞憂で、キャッチコピー通りまさにブッ飛び王道エンターテイメントだった。

連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌは、千を超える種族が共生する巨大宇宙ステーション・アルファ内に突如として現出した、破滅をもたらす正体不明のレッドゾーンの捜査を任じられ…というストーリー。

ポスターと予告編に惹かれ、今年に入ってから公開を心待ちにしていた作品。あのスターウォーズも影響を受けたフランスのマンガ=バンド・デシネが原作の映画化ということもあってかなり気になっていた。せっかくなのでIMAXで鑑賞したが……結果として、とても満足した。
近年CG技術が発達して「映像革命」という言葉を久しく聞かなくなっていたが、本作は新鮮な映像が多く、見ているだけで楽しい。どれもどこかで見たことがある映像と言えばそれまでだ。だが本作からは、観客を楽しませようという気持ちを感じることができた。
映像表現だけなら最近のスターウォーズよりも攻めている。特に序盤の、肉眼では見えないマーケットの描写は新鮮だった。

冒頭、人類が宇宙に進出していくダイジェストで、人間は様々なエイリアンと握手していく。異種族であっても理解し合いともに生活していく様子、凶暴でもどこか愛嬌のあるクリーチャーなど、スターウォーズ好きには親しみやすい世界観だと思う。

女好きで軽薄だがやる時はやるヴァレリアンのイケメンぶりや、ミス無くキッチリ仕事をこなしそうでいて案外ドジなローレリーヌのコンビはとても魅力的。
戦闘服?姿のローレリーヌが凛々しくて最高だった。

惜しむらくは、キャラが多過ぎて各人の掘り下げが足りないことか。
ヴァレリアンが女たらしながらローレリーヌにだけ本気になれる理由は何なのか、闇取引をしていたあのジャバザハットみたいなエイリアンの復讐心は口だけだったのか、クラゲ漁師は必要だったのか、バブルの扱いはあれで良かったのか、カエル顔のエイリアンは出した意味があったのかなど、疑問は尽きない。まるまるカットしてもストーリーが成り立つシーンが多い。壮大な世界観なので、たった2時間の尺で説明しきれないのは仕方がないところなのだが…。

だが、それを認めた上でも本作は素晴らしかった。スターウォーズとは違う、新たなスペースオペラが誕生したことが素直に嬉しい。
……続編を熱望するが、あとは興行収入次第か。
七沖

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