八木

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)の八木のレビュー・感想・評価

3.0
始めになんですけど、時間の都合上吹き替えを見て『そうだった!』と思い出したのですが、この映画って猿(達)が我々に何を発意するのかというのが見どころの一つになっているので、特別抵抗のない方は字幕行ったほうがよいと思います。英語圏で生活した猿が、そこで学んだ単語で意思を伝えることしかできないから、創世記で「NO」が様々な意味合いで使用できたわけだし、見てる人の気持ちに触れることができたわけで、吹き替えの場合「どういう単語にどういう意味が込められるか」に全く注目できなくてつらかったです。吹き替えの声優さんは素晴らしかったですけど。
上映時間は140分で、とにかくシーザーの物語の完結について『ドラマチックに見せなければ』という意気込みが強すぎて、映画全体として見るとわりと綱渡りにお話が進んでいった印象です。だからこう、感動しきれないところが多かった。例えば「涙」のシーンとか、「言葉を話す」シーンとか、前作までは人間臭さの象徴としてフックになっていた部分がわりと安売りされてしまってるのよね。シーザーが流暢に話せてても、「まあもうそれはいいっすよ」と飲み込むことに抵抗はないのだけど、それ以外でぎょっとするルール逸脱に見えるシーンが幾つかありました。そういうのに対して、焦って山場を積み上げようとする製作側の意図を強く感じてしまったんですよ。えらいもんで大きく破綻はしてないから、頑張れば感動して泣くことはできたとは思うけど。
リーダーの資質とか子を失った云々はまあ、ちょっと散漫な印象があります。よって、猿の世界をこれから新たに作り上げていく、という今後についての興味や感動は持続しきれませんでした。しかし、生物同士融和することはとても難しい、ということを2作かけて強調してきて、「言葉を失った人間」と「言葉を得た猿」ならばどうかという今作の問いに、わりと納得感のある結論が出せてたのは、この映画の価値として大きなところだと思います。
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