えんさん

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のえんさんのレビュー・感想・評価

2.5

高度な知能を得た猿と人類との全面戦争が始まって2年。猿のリーダー・シーザーは戦いを避けるために、森の奥深くに仲間たちとともに潜伏していた。ところがある日、人間たちの襲撃を受け、家族を殺されてしまう。自分たちの群れを守るため、新たな隠れ場所に移動するのを契機に、シーザーたち数名は群れと分かれ、襲撃をした敵軍の大佐に復讐を果たすために敵軍基地に乗り込んでいく。途中、口のきけない少女ノバ、動物園出身の奇妙なチンパンジー、バット・エイプを仲間に加えながら、ようやく敵軍アジトの要塞にたどり着く。しかし冷静さを失い、猿たちの存亡の危機を招くのだが。。高度な知性を持った猿への覇権の変遷を描く、「猿の惑星」シリーズのリブート版第3弾。前作「猿の惑星:新世紀」に続きマット・リーヴスがメガホンを取っています。

フランスの作家ピエール・ブールが執筆したSF小説「猿の惑星」は、1968年にフランクリン・J・シャフナー監督、チャールトン・ヘストン主演で映画化され、もはや様々な作品から引用されるくらいのSFの名作となっています。2011年から始まった、この新しいシリーズはリブートとはいわれるもものの、言葉の意味では正確ではなく、1968年に描かれた世界観になぜ変わっていったのか(すなわち、猿が知性を持ち、人間たちを凌駕するようになっていったか)を描くシリーズとなっていて、1作目の「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」では猿が如何にして知性を持ったか、1作目の後半から2作目「猿の惑星 新世紀(ライジング)」ではなぜ人間たちに反旗を示すようになっていったかが描かれます。僕は前2作をすごく面白いなと思っていて、特に前作の「新世紀」では、猿という集団の中で起こった裏切りが戦いへの火蓋を切らせるという、まるでシェイクスピア劇のような進め方に熱いほどの感動を覚えたくらいです。その意味では、このリブート三部作がどのような終結を迎えるのか、楽しみな鑑賞となりました。

今回は猿と人間たちの戦いは始まっているものとして、1968年版にあった、もう1つの重要な要素である、なぜ人間たちが退化してしまったのかを描いています。本作ではそれを口のきけない少女ノバを登場させているものの、物語としては重要な要素としてなってはいなく、とにかく復讐に燃えるシーザーの戦いの話に終始しています。ただ、あまりに復讐劇というアクションにフォーカスしすぎていて、観ていると単純な猿のアクション映画としか見れないのが残念なところ。無論、家族を殺されたとか、仲間を安息の地に導くとか、どこか聖書めいた引用はあるものの、それが前作ほど物語を盛り上げるような重要な要素にはなっていないのです。この終わり方からすると、このシリーズは本作で終了ということになりそうなので、このレベルの終わらせ方にしたのが凄く残念。前作までの2部作で完結したほうがよかったのかなと思うくらいです。

まぁ、終始人間としての姿が分からない(CGなのでモーション俳優ということになりますが)、シーザーを演じたアンディ・サーキスにはお疲れ様ということくらいですかね。。