ちちうえ

キル・ビル Vol.1のちちうえのレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.1(2003年製作の映画)
3.0
◉タランティーノ監督の“とっ散らかり”のはじまり

「レザボアドッグス」は新人とは思えない完成度だった
「パルプ・フィクション」は正真正銘の傑作だった
「ジャッキー・ブラウン」は肩の力の抜けた佳作だった

その後、タランティーノ作品は「フィールーム」を除き全て鑑賞したが、いずれの作品もこの初期の3作の出来には及ばない


私自身が感じるタランティーノ監督の特徴は
・過去の映画作品へのオマージュ
・既成のヒット曲や映画音楽の起用
・本筋に関係ない会話
・やりすぎ気味のアクション
などだろうか。


最初の3作では十分に練られた脚本があって、味付けとしての既成の音楽や、前面に出すぎないオマージュに好感が持てて“ごった煮”的な面白さだったが、だんだん“ごった煮”のまずさの方が目立ってきてしまっている。この作品も正直、とっ散らかってるという印象が強い。

当初は1本にする予定だったが、長すぎて1本にまとまらず、2部作になっているが、ストーリーは自分を殺そうとした昔の殺し屋仲間への復讐という単純なものなので、いくら一人一人のキャラクターや過去を描いても、さほど映画的な面白さが増幅するわけではないので、2本分の密度の内容があるわけではない。


キャストも肝心の主役のユマ・サーマンが強そうに見えないのと、敵役のビルがデヴィッド・キャラダインに大物感がなく、話の中心になるはずのこの2人の存在感が薄いのが難点。

いくつかある対決場面は最初の黒人女性との対決が、シンプルな肉体のみを使った闘いで一番面白かった。
その後は尻すぼみ。
青葉屋の日本刀での乱闘は、手足のパーツ分解といい、リアリティのない派手な血しぶきといい明らかに若山富三郎の「子連れ狼」の影響受けすぎ。
栗山千明のキャラクターは良かった。

我々、日本人にはうれしい千葉真一の出演や刀置き場がある飛行機などは面白かったが、オーレン・イシイの過去のみアニメだったりするのは違和感があった。

もしかしたらタランティーノ自身も初期の3作は越えられないと思っていてその後はB級映画に徹しているのかも、10作で引退は正解。


DVD吹替えで鑑賞(ブルーレイは青葉屋の対決が白黒になっているUSバージョンらしいのでDVDから買い替えの予定なし)
ちちうえ

ちちうえ