みおこし

サリヴァンの旅のみおこしのレビュー・感想・評価

サリヴァンの旅(1941年製作の映画)
4.0
'501 Must See Movies'という洋書を昔買って、今更きちんと読み直したら見つけた1本。
実は私、ヴェロニカ・レイクに去年一目惚れしまして(笑)。出演作はまだ観たことなかったので、動いてる彼女を見ること自体初めて。『L.A.コンフィデンシャル』のキム・ベイシンガーは彼女がモデルになってるんだとか。あえて顔の半分をブロンドで隠すヘアスタイルがトレードマーク、マリリン以前のセックスシンボルとして人気を博しました。

コメディの名匠プレストン・スタージェスによる本作。不景気のこの世の中でコメディ映画しか撮っていない自分に嫌気がさした映画監督サリヴァンは、自ら浮浪者として生活することで社会派の映画を撮ろうとする。10セント片手に旅に出てすぐ、女優志望のThe Girlと出会い、共に浮浪者として生活をするようになるが...。

モノクロ映画でこんなにクリーンヒットした作品は本当に久しぶり。『或る夜の出来事』と雰囲気は似てるけど、個人的にはこっちの方が好き...!!
まず、ただの恋愛もので終わらないストーリー。一見金持ちのお遊びにしか見えないし嫌味ったらしいな〜と思いきや、浮浪者たちの有り様を目の当たりにして純粋に変わっていくサリヴァン。コメディ映画はこんな大恐慌後のアメリカでは、誰も必要としてない。だからそんな社会を映し出すような映画が撮りたい、と一念発起するんだけど、そんな彼が最後に気づく映画が果たす本当の役割。1映画ファンとして、サリヴァンが最後にあの気づきを得てくれたのは素直に嬉しかったです。まさかの彼がハッとする映画がミッキーとプルートだったし(笑)。
演じるジョエル・マクリーはよく知らない役者さんでしたが、クリス・プラットみたいないい意味でボケてる男前で良かったです!(笑)
胸キュン要素はそんなに無いけれど、だからこそ男女ともに楽しめる展開。サリヴァンは事実上既婚者なので、The Girlとは何か一線を越えることは出来ません。(一緒に旅してる時点でアウトな気もしますが...)だから2人とも心を寄せ合うんだけれども、良い距離感を保ったまま話が進むので、個人的には不倫とかを美化してなくてこっちの方が好き!『アパートの鍵貸します』もキスシーンが無いから、逆にそのプラトニックラブにため息が出ちゃうから好きなんですけど、本作もそんな感じ。

と、今見ても全く色褪せない魅力が詰まってる本作。でも一番の成功の要因はヴェロニカ様だと痛感しました。月並みな言葉で恐縮ですが、ほんっとーーーに可愛すぎます。女性の私が見てもこれはたまらんです。(笑)
ただのセクシーお姉さんキャラなのかと思いきや、見た目はセクシーだけど胸に秘めた優しさや意志は誰よりも熱いThe Girl。あえて役名がないのもステキ。
浮浪者として現れたサリヴァンに最初にハムエッグを奢る登場シーンですっかり射抜かれました。本当に口をあんぐり開けてポカーンと見つめてしまう美しさ。クールビューティかと思いきや、笑うとまた可愛いのです。
そして一番の萌えポイント(笑)は、サリヴァンと同じように浮浪者の格好をして一緒に旅をするところ!もうなにこれ本当可愛い!!(笑)今すぐに皆様にも「Velonica Lake Sullivan's Travels」ググって頂きたい。イーディス・ヘッド監修のキャスケット帽にダボっとしたパンツとヨレヨレのジャケットを着たヴェロニカ。ゴージャスな格好の時も最高だけど、ボロを着るとまるで少年のようです。ただお高く止まってるお嬢様ではなく、文句も言わずとにかくサリヴァンに必死でついていくひたむきな姿は、苦労を重ねてきたんだろうなぁとホロリ。
だからこそサリヴァンに妻がいると分かった時に、彼がなにを言っても「Good.(素敵)」とふてくされて棒読みにツンツンするその姿が愛おしい...。
初めてビビアン・リーを観た時と同じくらいの衝撃を受けた、時代を超えて輝く素敵な女優さんです。コメディエンヌとしての才能バツグンなので、他の作品もどんどん観ていこう!

...なんか語りまくってしまいましたが、個人的には相当お気に入りの1本。最初から最後まで見飽きなかったし、見事!な1本です。往年の映画ファンの方も、モノクロ映画にあまり親しみのない方にもオススメ。
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