朝田

サリヴァンの旅の朝田のレビュー・感想・評価

サリヴァンの旅(1941年製作の映画)
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恐るべきテンポ。気づいたら始まり気づいたら終わる。90分とは思えない情報量。しかもしっかりと最後には泣けてくる。こういう作品を見てしまうと映画は余程の事がない限り90分を越えてはならないとすら思う。ウェスアンダーソンもこの映画のリズムから影響を受けたのではないか?と。ソリッドすぎるエンターテイメント。無駄なカットが一つもない。オープニングの、「映画内映画」とは到底思えない気合いの入ったド迫力の列車アクションから圧倒される。そしてまたあり得ない規模のカーチェイスが始まり、唐突にヒロインと出会いメロドラマへとシフトチェンジしていくメチャクチャな展開。カートゥーンアニメのような効果音の使い方が役者の超スラップスティックなドタバタとしたアクションを強調していく。そしておびただしい量のセリフの畳み掛けが作品の躁病的なグルーヴ感を持続させていく。かと思えば主人公二人の底辺を体験する日々は一切セリフ無しで素早いカット割りで見せていく。こうした演出も含めサスペンス、アクション、コメディ、メロドラマと幾度も映画内でモードが変わっていく様にはひたすら圧倒される他ない。あと何よりヒロインのヴェロニカレイクが奇跡的に可愛い。セリフをまくし立てるハイテンションな演技というのはともすれば不快感・ストレスに転じそうなものであるが、レイクの演技は嫌味がまったく無い。彼女がこの上なく可憐だからこそ、思わずサリヴァンの安否を最後には固唾を飲んで見守ってしまう。笑いが一番というベタなラストもここまで巧く見せられると流石に沁みる。素晴らしかった。
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