TAK44マグナム

ブラインド・フューリーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ブラインド・フューリー(1989年製作の映画)
3.5
レプリカントVS忍者、世紀の決戦!

・・・・・すみません、嘘つきました!


「ローグワン」にドニー・イェンが盲目の達人役で出演して話題になっている今こそ、目が見えないのに強すぎるヒーローを描いた映画が気になるはず!
え?ベン・アフレックが弁護士やってるやつ?
違います!
確かにデアデビルもそうですけれど、ほら、我が国にも古くから超強い盲目のヒーローがいるでしょう!?
そう!座頭市ですよ!
でも、勝新太郎でもなければたけしでも綾瀬はるかでもないんです。
もちろん、香取くんでもない。
では、いったい誰なのか?
正解は・・・・・
ルトガー・ハウアーであります!
「ブレードランナー」や「ヒッチャー」の、あのゲルマン怪優!
なんかもう強い男の役しか回ってこず、それを律儀にこなしているような感じの俳優さん。
そんな彼が本作で演じたのが、役名こそアメリカ人になっていて舞台もアメリカですけれど、正に座頭市なのです。
なんと、正式に勝プロから許諾を得たリメイク作品なんですよ、これ。

ベトナム戦争で失明しながらも九死に一生をえたニックは、村人に助けられ、そこで剣の扱いを学びます(←何故?)
20年後に帰国したニックは、さっそく戦友のフランクを訪ねますが、フランクは悪党に麻薬をつくることを強要されており、脅迫材料として妻と息子が狙われていました。
たまたま居合わせた格好になったニックは、何がなんだか分からないながらもフランクの家族を得意の剣術で守りますが、奥さんは死亡、遺言で息子のビリーをフランクが居る街まで連れていってほしいと頼まれてしまいます。
ニックとビリーの、どこかギクシャクした珍道中が始まりますが、そこにも悪党の魔の手がせまっていたのでした・・・。

うーむ、シリアス一辺倒だと思っていたら、敵の馬鹿二人組(こいつらの死に様は驚異的にアホなので必見)が出てきたあたりからギャグもちょいちょい挟むようになり、そこそこ笑えるので娯楽作としては割と観やすい感じですね。
「何か燃えているぞ!」「愛が燃えているんだよ!」の会話が馬鹿らしくて結構好き。

アクションのキレはそこまでありませんが、一応、ルトガー・ハウアーは盲人の演技と剣術を破綻のない程度にはこなしている印象。
ただ、これは演出の問題だと思いますが、ソードアクションに
「重み」が感じられないので少々淡白。
ホラー映画じゃないので仕方ないところですが、ここはもっと血しぶきが飛んだり、ポンポンと手足や首がチョンパされちゃったほうがインパクトもあって良かったんですけどね。
人(肉)を斬っている感が薄いんだよなあ。

ツッコミどころも多くて、ビリーが簡単にニックについてゆくのもどうなんだと。会ったばかりなのに、長距離バスに二人で乗るかね?
大体、殺人事件が起きているんだから警察が動いているだろうし、ニックなんて重要参考人のはずなのに、そもそも警察の影も形もない。
観ていて、出だしからツッコミしまくってしまいましたよ(苦笑)。
20年もベトナムで剣の稽古していたのも謎なら、死亡していることになっているのに普通に帰国できているのも謎。
落とした仕込み杖が簡単に見つかるのも都合よすぎるなあ。

あと、決戦の舞台がわざわざスキー場なのに、それを活かした設定がほとんど何も無いってのもショッパイ。

でも、ショー・コスギが殺し屋として登場、日本刀で襲いかかってるという最大のサプライズが最後に待ってました!
投げたリンゴを真っ二つにしたニックを見て、「ほほう、やるな」と言わんばかりにニヤリと笑うショー・コスギ!最高じゃないですか!
ルトガー・ハウアーVSショー・コスギというビッグマッチも、決着は「やっぱりそうなるのね」と分かりやすいところに着地するのですが、それはそれとして中々に楽しい闘いでした。
そうそう、DVDのジャケットなんですけどね。
表にも裏にも黒装束の忍者が日本刀かまえて、まるで主人公のように目立っているんですけど、そんなん本編に0.1秒も出てきません(苦笑)。
これってやっぱりショー・コスギをイメージしているんでしょうけれど、だったらせめてショー・コスギの忍装束姿を使えばいいものを権利関係か何か知りませんが全然別人なのは二重のジャケット詐欺と言ってよいと思うので、どなたか代わりに訴えてください(笑)!

色々とおかしな部分も見受けられるのはB級映画なので当然。
そんなんでも、意外と巧いカメラワークや泣かせるラストが作品の質をアップさせており、男の生き様映画として無理矢理に語り継ごうと睡眠時間を削ってまでレビューをあげている次第であります!
流れないはずの熱いものが頬を伝ってゆくラスト、別にもらい泣きをするほどではなかったにしろ、強い男と子供の涙という反則技には、それまでのツッコミどころを忘れさせる何かがありましたよ。

・・・・・いや、ショー・コスギを忘れることはできなかったけど!


レンタルビデオ、セルDVDにて