MasaichiYaguchi

ディーパンの闘いのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
4.0
主義主張、民族や宗教の違いで人は争い、そして時にそれは戦争に発展する。
この作品では、スリランカの人口の大半を占めるシンハラ人と少数派タミル人との対立に端を発した内戦によって家族を失った主人公ディーパンと女、そして母を亡くした9歳の娘という他人同士の3人が偽装家族としてフランスで過ごす日々がドラマチックに描かれていく。
この主要キャストの3人は映画初出演で、その演技のライブ感はドミュメンタリータッチでリアルだ。
特に主人公を演じたアントニーターサン・ジェスターサンは、実際にタミル・イーラム解放の虎に入隊し、訓練を受けて19歳まで少年兵として戦っており、後にフランスに難民として逃れてきた経歴のある、正にディーパンそのもののキャスト。
本試写会では上映後に山下敦弘監督と松江哲明監督の対談があったが、その中で映画が予想を裏切るような展開をして新鮮で面白かったとの話しがあったが、確かに映画の冒頭とラストでは同じ作品とは思えない程に雰囲気が違う。
特に終盤へ向けての怒涛の展開は正直一瞬呆気にとられたが、カタルシスがあって胸が高まった。
邦題が表す「ディーパンの闘い」とは?
暴力が吹き荒れる故国スリランカを離れ、彼は平穏な生活と内戦で失った家族を再生する為に日々闘っていたと思う。
そして本作品は、主人公が闘うことによって「嘘から出たまこと」を描こうとしたのではないかと思う。
対談で山下監督はラストが腑に落ちないというようなニュアンスを発言されていたが、私は松江監督同様、この予定調和のようなこのラストこそ、冒頭の凄惨なシーンとの対比としてあるような気がする。