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神のゆらぎのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

神のゆらぎ(2014年製作の映画)
4.0
静謐で重厚でおそろしくハイコンテクストな群像劇。

メインキャストたる3組のカップルと1人の男について、バックグラウンドが語られることはおろかセリフによる心情描写すらほぼ皆無。ひたすら淡々と、しかし時に冗長とも言えるほど丁寧に行動を追うことですべてを伝えようとする作風は、映画を読み解く鍵のひとつである「エホバの証人」さながらのストイックさを醸し出していると感じました。内容はまるで違うものの、ずいぶん前に見た映画「ガタカ」にも通じるシリアスな痛みがなかなか消えないというか。

自分の些細な選択が他人の運命を変えうるという事実、穢れた血が命を救う一方で肉親との絆さえ躊躇なく断つという苦悩、歳を重ねてなお燃え盛る許されない恋、姪への懺悔ゆえ罪を犯す決意、細かく刻んで鼻から吸ってラリったままんまギャンブルに興じたり、棚の奥から酒瓶取り出しラッパ飲みしてしたたか酔ってお店の売り子を困らせてみたり、ブルーどころか真っ黒にこんがらがった生または性への欲望はまるで複雑なあやとりのようで、鑑賞者の数だけ違った感想が聞けそうな作品であると感じました。過去と今が交錯する展開も凝ってる。

終始重たいトーンを貫くがゆえ見終えた後にスカッとするとは言い難いですが、かつて大事なひとを失くした無力感に打ちひしがれた経験を持つ身としてはわりとすんなり腑に落ちるというか膝を打ちたくなるというか、ある意味ではあの日の自分が数十年の時を経て救われたような報われたような不思議な気持ちになったんでした。たまにこういうのを見ておくと、平穏無事な毎日に過剰なほどのありがたみを感じられるので精神衛生上とてもいいです。
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