ちろる

神のゆらぎのちろるのレビュー・感想・評価

神のゆらぎ(2014年製作の映画)
3.8
静かで、でも淡々とはしていない。
わずかな気の緩みさえも許されることはないようなどんよりとした緊張感の中で話は進む。
白血病を患ったエホバの証人の信者の青年と看護師である婚約者。
腸の中に麻薬のカプセルをして密輸する男。
カジノバーで不倫をしている高齢の男女。
大金をカジノで失うその上司。
全く接点のない大人たちこそれぞれれの運命の分かれ道はまさしく神のゆらぎによってどうとでも転ぶ。
原題の直訳ではないけれど、これはとても考えられた邦題だと思う。

時系列は少々分かりにくいし、関わりのない登場人物たちのそれぞれの生活シーンは少々退屈でもある。
しかし彼らの1つ1つの選択がまるで糸をいきあうかのように一瞬にして繋がると、すべてのなんでもないシーンも回収されていき、割としっかりとした骨太なストーリーだったんだなと思う。
普通ではない人間たちではあるけれど、とてもリアリティがあるし、音楽のない半ば殺風景な世界観のおかげで彼らの微妙な心のゆらぎをしっかりと見せてくれていた。

「飛行機が落ちるのは全能の神が存在しないからだ。」
大切な人をもしも飛行機事故で失ったのなら神なんか存在していないのではと思ってしまうけれど、飛行機が落ちることも、やはり神の仕業なのではという皮肉な考えもふとよぎる。
本当に天国があり、永遠の命がそこにあるのかもわからない。
神に縋りながら信仰に生きることにしても、信仰など無くても、結局は誰にでも自分の心の中に住む神様が必ずあり、その本意に従うことしかないのだと、じわじわ実感させられる作品でした。
ちろる

ちろる