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サウルの息子のchaooonのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.2
第2次世界大戦下ナチスドイツのホロコーストで最大級の犠牲者を出したと言われるアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。そこでゾンダーコマンドとして働くハンガリー系のユダヤ人サウルの視点で語られる最期の二日間の物語。

ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊。
ユダヤ人を同じユダヤ人をガス室に誘導し、その後始末をさせていたなんて想像もしていなかった😨
非人道にも程がある。
これまでフィクションやドキュメンタリーでホロコーストにはいくら見聞きしてきたけど、今までで一番その惨状に入り込んだ気がした。

32mmフィルムで撮影された映像と独特なカメラワーク🎥
ぼやけた背景に映り込む地獄の情景。
サウルの顔や背中越しに覗く程度なのでハッキリとは映らないが、収容所のおぞましい姿が垣間見れる。
直視出来ない残虐な光景を、見ないフリしているような視点にも感じる。
壁越しに聴こえる断末魔の叫びも。

ただ息子を正しく弔いたい…
もうこのスタートからして辛い😭
もう何もしてあげることの叶わない息子への最後に唯一出来ること…
生きる為でも、未来のための戦いでもない。
あるのは間もなく訪れる死のみという環境の中で、魂と尊厳の為の戦い…。

映画やドラマで知り得る限りの知識ではあるけど、ユダヤ教の弔いって色々制約があって、遵守するのはかなり大変なはず…。
夥しい数の死体は焼却されるけれど、ユダヤ教の火葬は死者が復活できないとして禁じられているというから、何よりも回避したい。
宗教の重みを感じると共に、それに反して命の扱いの軽さ。

人間としての正常な精神ではその場に1秒たりとも居ることは出来ないであろう場所で、サウルの感情も残されていないように感じる。
息子の無惨な亡骸を見ても取り乱したりしないのは、それ故なのか、それとも本当の息子ではないから…?
その辺は最後まで真実ははっきりしないけど、1人の少年の弔いによって、彼が守ろうとしたものはハッキリしている。

今作で長篇デビュー作にして見事カンヌのグランプリを獲得するという異例の快挙を成し遂げたネメシュ・ラースロー監督!
これが長篇デビューとは…す、凄すぎる…。
タル・ベーラの助監督の経験もあるとか。
タル・ベーラもそろそろチャレンジしなきゃかな🥺
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