最高に楽しみにしていた一本。
ストーリーは単純。もはや、これはストーリーなのか?と思わせるほど。
しかしそのなかにそのなかにある人の想いが深い……とにかく深かった……
まず始まってから衝撃的すぎ。いきなりユダヤ人をガス室に入れ、ガスが噴射される。必死で叫び、扉を叩く耳を塞ぎたくなるほどの音。しかし、サウルは表情一つ変えず。
同胞であるユダヤ人をガス室へ送り、死体の山となったガス室を掃除し、死体を焼き……そんな地獄のような光景が当たり前になり、もはや生きながら死んでいるよう。
ほとんどのシーンがサウルの背中の赤い印が映るように後ろから撮られており、フォーカスをそこに合わせているので周囲の背景がボケています。もはやサウルにとって、見える世界はどうでもいいと言わんばかりに……特徴的な撮影方法で、引き込まれました。
この救いのなさはダンサーインザダークを思い出させるレベル。ホロコーストものは何本か見てますが、いい意味で期待を裏切られました。人間の尊厳とは何かを究極的に描き、かつホロコーストとは、戦争とはこういうものだ!という監督の思いがすごく伝わってくる作品だと思います。
初めての長編映画でここまでの作品を作るとは……いや、逆に始めてたからこそここまでメッセージ性の強い作品に仕上がったのでしょうか…最後にサウルが見せたあの表情はいったい何を意味するのか。いろんな人と語り合いたい……
素晴らしい作品でした。