モナ郎

サウルの息子のモナ郎のレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.3
疲れた・・・。
重たく、救いがない。映像の視点も極端に狭く、音楽も一切流れないので、「物語を見守る自分」、というよりは、自分も強引にアウシュビッツに連れて行かれた感覚になる。そして、その狭い視点には映らない、色んな残酷なシーンの想像をたくさん強いられる。ひたすらぐったりする。

「野火」を観たときにも思ったけど、こういう映画で見る大自然ってすごく怖い。普段は心地よいはずの木や草の香りの感覚も、人がどんどん殺されていく中で見ると、得体の知れない感覚になる。途中、夜の野外フェスみたいなシーンがあって、でもそこで鳴っているのは音楽ではなくて、銃声と人々の絶叫だった。

手塚治虫の「アドルフに告ぐ」で、「狂った総統の下でまともな部下はやっていけない。俺たちみんな狂ってるんだよ」みたいな台詞がすごい印象に残っていて、この映画を観ながらそれを思い出した。
イデオロギーは人それぞれ自由だけど、頭ごなしにナチスを絶賛する人はモラルとかそれ以前に想像力なさすぎだよなあ、と思ってしまう。
モナ郎

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