第二次大戦中、ユダヤ人収容所にはゾンダーコマンドという人たちがいて、施設内での汚い仕事や死体処理なんかをこなしていたらしい。彼らは同じユダヤ人で、同じ囚人。処刑を免れる代わりにそういう仕事をしているようだ（でも多分最終的には処刑される）。
その一人であるサウルは、死体処理の際に自分の息子を見つける。同ゾンダーコマンドのラビ（ユダヤ教の聖職者）を見つけ出し、ユダヤの儀式で埋葬することを頼む。
観ながら、息子という言葉に対する違和感がずっとあった。これは俺の息子だ、埋葬してくれ、ユダヤの礼拝を施してくれ、と嘆願するサウルだけど、なんだかその辺が曖昧。最終的には、『サウルの「息子」』とでもいうべきか、と自分を納得させるしかない方向へ。
サウルにとって「息子」とはなんだったのか。彼のユダヤ人としての誇り、ナチスへの反発。生命の尊厳を踏みにじるようなやり方へのレジスタンスとして、「息子」をユダヤの儀式で埋葬することに命をかけたサウルのことを思うと、いいようのない、想像すらできないような感覚になった。
いい映画です。観て、考えてみてください。
