じょ

サウルの息子のじょのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.7
ホロコーストの惨状を描いて泣かせに来る系の作品ではなかった。極限まで追い詰められた「人間」を描いている点で夜と霧みたいな感じ。画面の縦横比が不思議。常にサウルを至近距離で捉えたカメラワーク、これまで感じたことのない臨場感。

ガス室で処刑される人たちの死体処理をして(同胞)、番号で呼ばれ、人間として扱われていないゾンダーコマンド。リストは数を埋めればいいし、個人の内面なんて全くなきものとされている中で感情を捨てたっぽい(自己防衛のため?)サウルの表情がもう「死んでる人」ってくらいの「無」で、これを凄い感じる。そんな中で息子の死を(ほんとに息子?)見ても、正直とっても悲しんでいる様子には見えない。
でも、火葬ではなく埋葬にこだわり、命をかけてラビを探す。
→なんで死んでるのに、悲しんでるようには見えないのにこんなにこだわるの?→日々、燃やされ魂が救われない人たちを見ている&それに加担しているから、それじゃだめだと思ったの?
→自分たちの暮らしを文字で残したり、写真で残したりするのと同じで「人間としても扱われない、存在すらなかったことにされている自分たち」が生きた証を残すため?

全然想像できないけど、こんな壮絶な状況に居続けると「生死」とか超越して、「記憶」を残すってところに人間行きつくのかな。
最後、森の中で少年に見られた時に初めてサウルが笑った
→「自分たちのこと覚えててね」的な?

音も、映像も、不気味でリアルだった。「こういう人たちがいた、こういう時代のこういう場所があったんだよ」がずしんと来る映画
じょ

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