新潟の映画野郎らりほう

サウルの息子の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.5
【son of …、life is beautiful】


「ライフイズビューティフル(ベニーニ)」観賞時に思ったのは『現実を見せない事、見ない事〈無知〉こそ幸福』であり『希望とは自己を -真実を- 歪める事』であるとゆう二律背反だった-。

私が指針とするヴィクトールフランクル著『夜と霧』。その中に、強制収容所過酷下に尊厳他全てを奪われ 多くの者が絶望/絶命する中で、強制労働中 沈みゆく落陽の美しさに『私のこの「美しい」と思う気持ち、感動する心まではナチは奪えない』とゆう一節がある。
絶望下に 絶望しか見なければ 絶望しか見えぬ事当然であり、喩え地獄でも 希望さえ見えれば命脈つなぐ事可能なのだと-。
甚く感動し 以降私の社会認知に於ける指針となるわけだが、同時に『それは認知を歪めてはいないのか』『ポリアンナ症候群や楽観主義バイアスではないのか』とゆう二律背反に私は懊悩する事となる。


『人間に残された最後の自由は、どんな状況にあっても、その中で自分の態度を決めることだ』-ヴィクトールフランクルの辭が谺す。

話を戻そう。

地獄を生きるとは?地獄で希望を見、命脈を保つとは?認識を歪め偽った自己は果たして“私”と言えるのか?生きていると言えるのか?何が真実で何が幸福か 私には到底計り得ず比較も出来ない。

「ライフイズビューティフル」に於ける“見つめ合う父子”。作品姿態に依って大きく逸失した前述の“二律背反”的主題を、本作「サウルの息子」の“父子の眼差し”はもう一度“見つめ直している”。




《DVD観賞》