Foufou

ロブスターのFoufouのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
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この監督ならではの奇妙な世界観。

独身はどうも悪なんです、社会にとって。で、死別生別を問わず伴侶を失えば、海沿いのステキなホテルに滞在して期日までに新たな伴侶を探さなければならない。探せなければ、希望する動物に変えられてしまう。

この世界観にあっては、身体的な特徴なり精神的な傾向なりが一致していないと誰かとパートナーになることはできない。偽れば、こっぴどい罰が待っている。

ディストピアものといっていいのか、あるいは風刺、暗喩と捉えるべきか。ついこの世界観の合理性を読み解こうとしてしまうんですけど、年中濡れそぼつ背景の森をですね、ラクダが通過したりフラミンゴが毛繕いしていたりと、そのシュールな絵面がいつかなずんでくるように、よくわからないまま見入ってしまうのですね。高揚はしないけど。

独身は社会悪なんですけど、アウトローとして生きる道も残されている。残されているんだけど、そこでもルールと罰が支配する。つまりどこに所属しようと「自由」が奪われている。意志的な、自発的な行動がそもそも許されない。

ジョージ・オーウェルの『1984』を思うわけですけど、そこまで殺伐としているわけではない。束縛のあり方は、現代の勤め人が甘受するそれと大差ない。イヤならやめろ、である。ただしこちらは人間を。

結局最後は究極の愛として我々の思い描くひとつの定型なのかもしれない。ただウエイターが一人になったレイチェル・ワイズに水を注ぎにきますよね。あれで時間の経過が示唆されているとすれば、おのずと不穏さが立ち込めてくる。

静かな映画なんですけどね。
心ざわつく映画ばかり撮りますわな、この監督は。

しかしレア・セドゥっていい役者だなぁ。北欧系なのかな、この人の面構えは映画に独特の気品を与える。フランス語を自在に駆使するのも強みだわ。映画に層が加わるというか、ひとりでガラリと映画の雰囲気を変える力を持っている。
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