このレビューはネタバレを含みます
結論から述べると
終始独特な世界観で楽しく観賞出来た。
冒頭から降車した女性が徐ろにポニー(?)を銃殺するシーン。
主人公が施設で初めて拘束される場面で
怒ったように吠えるワン公。
これらは1度目と2度目の観賞では
まるで意味が違ってくる。おもしろい。
中盤、ある事情でサイコなふりをしていた主人公が1抜けしたかつての友人(脚が不自由)の"娘役"の脚を突然蹴り上げ
「これで父親と同じ歩き方が出来る」
と言い放つなど
ブラックな笑いもあり不謹慎だが
思わず笑ってしまった。
いま世界では至極当たり前に
"結婚をするのか、どちらでもないのか、しないのか"、多様性という名の下
数多の選択肢を自由に行き来可能だ。
しかし本作ではそれが法律で禁止された世界線で、登場人物たちは選択肢の中心に位置する"どちらでもない"という曖昧な選択さえも許されず、しないといけないorしてはいけないという両極端なコミュニティで生活している。終始コミカルな描写なのが唯一の救いだ。
いまの自分の生活に当て嵌めたら…
あぁ想像しただけで息が詰まりそうだ。
"選択肢"の階調を自由に行き来できる事がどれだけ幸せか。
本物の愛があるなら、そこに偽物の愛が存在してもいい。
だって人間そう単純じゃないから。
終盤、
"愛してはいけない"コミュニティで
本当に愛する人ができた
主人公がある選択をする。
その方法がある意味極端なのは
先述した世界観がゆえ
皮肉にも理に適っていて残酷だった。
本作の好きな台詞
反体制派(恋愛禁止)のボス、
レア・セドゥの
「ダンスナイトの時も同じだ
皆1人で踊る
流すのは電子音楽だけだ」