LalaーMukuーMerry

ロブスターのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
3.7
私はひとり身になってしまったので、そのホテルに厄介になることにした。そこなら短い期間に(45日以内)、新しい恋人が見つかるだろうと思ったからだ。カップルになればシングルルームからダブルルームに移され、さらに進めば家族でヨット暮らしもできるようになる。
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だがリスクも承知の上だ。その期間内に恋人を見つけなければ、動物にされて森に放り出され、狩りの対象にされてしまうのだ。入って知ったのだが恋人探しが目的だから、オナニーは絶対禁止の厳しい世界だった(泣)。同じ日に入居した人たちも必死でパートナー探しをしている。うまく恋人ができなかった人は、動物にされる前に森に逃げ込むことが多い。そういう奴らを狩りでしとめれば一人につきいくらかの猶予期間が付与される。期限が迫ってくるとパートナー探しよりも、狩りの比重が高まってくる異常な世界に嫌気がさして、私は森に逃げこむ決心をした。
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深い森の中で私を迎えてくれたのは、カップル社会の文明的な暮らしを拒んで、一人で自然の中で生きる反体制レジスタンスの人たちだった。ここなら私は自由に暮らしていけるかもしれない。
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だが森の世界のリーダー女性から教えられたのは、恋人つくりはもちろん、セックス絶対禁止という一人暮らし社会のとても厳しい掟だった。私は、すぐにこの世界にも違和感を覚えるようになった。そしてこともあろうに、ある女性を好きになってしまった。彼女も私に好意を抱いている。私たちは二人で森の世界から逃げ出す計画を密かに立てた・・・
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なんだこの世界の設定条件は? 開いた口が塞がらないです。こうやって文章にすると、これは間違いなくコメディでしょ、それもとびきりブラックなやつ。でも作品のテイストは笑うタイミングを一切排除するようなシュールな難解系・意味深風に仕上がっているから、戸惑わないでいられるだけの心にゆとりがある状態でのみ、ご鑑賞することをおススメします。
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もうちょっと普通の、その中間の世界だってあるだろ。こんな風に切り取らないで。
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ラストは、愛の純文学のような透明感。 何なんだこれ!