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グレン・ミラー物語のtakのレビュー・感想・評価

グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
4.5
僕は中学高校と吹奏楽部に所属していた。最初は打楽器をやりたかったのだが、顧問の先生は僕を見てこう言った。
「手、長そうだね。」
気付いたら僕はトロンボーンを持たされていた。あの曲がった管を延び縮みさせる金管楽器だ。以来、高校卒業まで僕はトロンボーン吹きとして過ごし、クラシックもポップスもジャズも歌謡曲も野球の応援もやる環境で、雑多な音楽嗜好が深まっていくことになる。

映画に夢中になるのもその時期。クラシックを上映している映画館があったら、自転車を走らせて観に行っていた。「グレン・ミラー物語」もそんな時期に初めて観た。ミラーと同じトロンボーン吹きだもの、この映画が嫌いなはずがない。生前、グレン・ミラーとその楽団の音楽がどれだけ愛されていたかがわかる素敵な伝記映画だった。

FMでエアチェックしたサントラ盤も繰り返し聴いた。「イン・ザ・ムード」や「ムーンライト・セレナーデ」などグレン・ミラーの代表曲はもちろん収められているし、ルイ・アームストロングも参加した「ベイズン・ストリート・ブルース」「黒い瞳」も大好きだった。繰り返し聴いてソロ部分のメロディーは、その演奏で覚えてしまった。そして僕の体にスウィングの心地良さを教え込んでくれた。吹奏楽部でも、スウィングジャズの曲を演奏するのが大好きだった。

音楽家が愛する人に曲を捧げるのって素敵だ。ポール・サイモンが当時の彼女だったキャシーを、ジョン・レノンがヨーコを名指しで歌ったり、リチャード・マークスがシンシア・ローズに宛てたラブレターにメロディをつけたのにも憧れた。「愛情物語」や「グレン・ミラー物語」にもそんな場面が登場する。なんてロマンティック!♡、とニキビ面の高校生はウットリしたんです。グレン・ミラーは、妻ヘレンにしかわからない二人の思い出を曲にする。電話で「明日ニューヨークで結婚しよう!」と言い、着いたらホテルに電話するように彼女に言う。その電話番号「ペンシルベニア65000」を曲にしちゃうんだから。ジューン・アリスンが驚く表情は思い出してもキュンとくる。
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