ほーりー

グレン・ミラー物語のほーりーのレビュー・感想・評価

グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
4.5
1950年代のハリウッドはどういう訳か、ミュージシャンの半生を綴った伝記映画がたくさん作られていて、有名どころを挙げると「ベニイ・グッドマン物語」「愛情物語」「5つの銅貨」等…いくつかあるが、この手のジャンルでどれか一本選べとなると、おそらく本作の名が一番多く挙がるのではないだろうか。

理由はいくつかあって、まずグレン・ミラー自身の抜群の知名度が1つ。
「ムーンライト・セレナーデ」「茶色の小瓶」「イン・ザ・ムード」「チャタヌーガ・チュー・チュー」なんて未だにテレビでも流れているし、曲名は知らないという人がいても、曲自体を全く聴いたことがない人はまずいないだろう。レッド・ニコルズの伝記映画「5つの銅貨」も完成度の高い作品なのだが、当人の知名度の高さでいえば圧倒的にグレン・ミラーの方が軍配が上がる。

2点目は劇的な最期であるということ(グレン・ミラー自体を詳しく知らない人にとってはネタバレになるのであえて書かないが)。
同時期の大スターを扱った「ベニイ・グッドマン物語」と一線を画すのはこの点で、要するにグレン・ミラーという人物自体が非常に映画向きな題材であり、よっぽど下手な監督でなければ駄作になる筈はないのだ。

しかも単なる偉人伝にとどまらず、アンソニー・マン監督が愛妻物語としてきっちりまとめあげているのもこの映画のファンが多い理由であろう。ラストの「茶色の小瓶」のくだりは、何度観てもそのたび涙が頬を伝わってきてしまう。
ジェームズ・スチュワートとジューン・アリソンはサム・ウッドの「甦る熱球」以来の共演だが息はもうピッタリで、事実、私生活でも夫婦だとファンが勘違いしたという逸話も頷ける。
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