風の旅人

ちはやふる 上の句の風の旅人のレビュー・感想・評価

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
4.0
「もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし」
(前大僧正行尊「百人一首」)

これが噂の『ちはやふる』か!
巷で評判になるのも頷けるなかなかの傑作であった。
あと二作つづくというのだから恐れ入る。
原作は未読だが、そんなことは別段問題にならない。
映画自体が素晴らしかった。
何と言っても綾瀬千早役の広瀬すずの演技が飛び抜けていた。
ただかわいいだけでなく、演技派女優であることを思い知らされた。
以前から私は彼女の「目力」に注目してきたが、今作でもその魅力を遺憾なく発揮していた。
意識的に目のアップが使用されていた。
本当に彼女の目は印象的だ。
女優になるべくして生まれてきたと言っても過言ではないだろう。

物語は競技かるたというマイナー・スポーツを通して、若者が成長していく過程を描く。
その中に友情や恋愛を絡めながら、うまく料理されていた。
特に印象に残ったシーンが二つある。
一つは千早と太一(野村周平)が小学生以来久しぶりに再会するシーン。
屋上のドアを開け、勢いよく飛び出す千早、その周りを舞う桜の花びら。
あまりの美しさに思わず涙腺が緩んだ。
もう一つは自分の存在価値を疑い、意気消沈する机くん(森永悠希)を、千早がかるたを飛ばして励ますシーン。
これは競技かるた特有の演出であり、涙なくして見られなかった。
日本が世界に誇れるシリーズの幕開けである。
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