JunIwaoka

人生タクシーのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
3.5
2015.11.22 @ 16th Tokyo FILMeX

ベルリン映画祭で金熊賞受賞作!というより映画制作を禁止されているジャファール・パナヒ監督の最新作ということに興味をそそられていたら、フィルメックスで特別招待作品としての嬉しい公開。
パナヒ自身がタクシー運転手に扮し、乗客者とのやり取りからテヘランの現状を捉えたドキュメンタリーという事前知識はあっさり裏切られる。。まずドキュメンタリーの堅苦しさは一切なく、相乗りしたユニークな乗客同士の辛辣なやり取りや、運転が下手すぎると怪しまれる自虐的描写。そして突然嵐が通り過ぎるような呆気にとられる展開に思わず笑ってしまう。あの金魚鉢のくだりはなんなんだろうな。乗客によって見え隠れするイラン社会は大変そうだけど、その中でもなんだかみんな生き生きとしている。映画制作を禁止されているだけあってゲリラ的に撮影しているが、これはドキュメンタリーではなかった。。笑
抑圧的な社会で表現することの自由をアイロニカルに問う映画で、表現の手段として映画がいかに素晴らしいものかを意識していて、かつ閉塞的な社会であってそこに暮らす人たち(みんな自分勝手なんだけど。。)の愛おしさを寛容な眼差しで描いているのが心に残る。
投獄された友人の面会に行くという知人の女性弁護士が、理不尽さを語る口は、投獄された経験を持つパナヒ自身の主張を共感できるように伝える面白いアプローチだった。またクソ生意気な姪っ子が短編映画を撮るという学校の課題で、自由を撮らなきゃいけないけど、本当の自由を撮ったら怒られるという皮肉じみたボヤキに閉口するしかない様子もタブー意識の強い日本でもなかなか共感出来るものだと思う。
ノンフィクション風ということを逆手にとった説得力のあるとても映画らしい映画である。パナヒは投獄も何度かされているらしいけど、そんな風には見えないどこにでもいそうな困り顔のニコニコしたおっさんという風貌も印象に残る。