牛丼狂

人生タクシーの牛丼狂のレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
2.0
新宿武蔵野館で鑑賞。イラン映画。
20年間映画を撮ることを禁止された(リアル)監督自身が、タクシードライバーとなって(おそらくフィクション)お客さんと言葉を交わす。
演者の、フロントガラス手前のカメラの存在を意識させるような言動がある。ドライバーの監督自身がしばしばカメラの向きを変える……など。ゆえにドキュメンタリーなのかとも一瞬思われたが、内容からして完全なるフィクション作品だろう。フィクションか否かの議論は、明確な定義が困難な以上、意味を為さないので割愛する。
この映画を見て「どこまでがドキュメンタリー/リアルなのか」を疑問に思う方には、森達也さん(上映前の短編映画の監督)の著書を薦める。
フィクション作品だとしても、リアリティは登場人物を理解するにあたって欠かせないものだ。今作では疑問を感じる点がいくつもあった。例えば映画関係者がやたら多いのには甚だ違和感がある。姪っ子はいったいどんな物語を作ろうとカメラを回していたのか。単にカメラを回すという設定が欲しかっただけに思えて、都合の良さを感じた。
基本的には、フロントガラス手前、運転席・助手席のバストショット、後部座席などの限定されたショットと、上述したように登場人物らの都合の良い設定によりiPhone、デジカメで撮影される映像で構成される。ショット数(カット数ではない)がとても少ないため会話に面白味を見出さなければ退屈するだろう。
ほか。演出に粗悪な面が見られた。例えば都合のいいタイミングで、電話という画面外の要素が画面内に干渉してくることだ。その際、通話相手の音声が聞こえる/聞こえないの明確な使い分けが感じられずに一貫性のなさを感じた。
ラストシーンはドキリとさせるものがある。しかし、こうするのならやはりドキュメンタリータッチを徹底するべきだろう。せめて、登場人物の偶然(状況設定)には目を瞑るにしても、登場人物全員が違和感までにカメラが設置されたタクシーに怪訝な態度(必然的な行動)を見せなければ駄目だ。



短編映画2作品が同時上映された。実は目当てはこちらである。

『映画を撮ることを禁じられた映画監督の映画のような映像』
森達也が監督。普通に面白い作品だ。
「撮るのが駄目なだけで編集はいい」と学生時代に撮影した映像を編集してみたり、「映画はスクリーンで上映されるもの、これはモニターに映った映像」と、屁理屈を言ってみたり。
ラストシーンは『FAKE』のオマージュをしてしまっている。

『ちいさな宝もの Ein kleiner Schatz』
松江哲明が監督。一歳半の息子へのホームビデオである。
全然面白くなかった。子どもが食べたり寝たり散らかしたり……。松江さん、こんなものを観客に見せて何になるんだい?
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