えんさん

人生タクシーのえんさんのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
3.0
ジャファル・パナヒ監督はタクシー運転手に扮し、様々な乗客たちを乗せていく。乗客とのやりとりの中から、テヘランに生きる市井の人々の姿や現代のイラン社会が浮き上がってくる。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界三大映画祭で高い評価を得る一方、映画製作や出国を禁じられているイランのジャファル・パナヒ監督のドキュメンタリー風ドラマ。第65回ベルリン国際映画祭にて最高賞にあたる金熊賞を獲得しています。

例えば、大好きなことでも親にやってはいけないとダメを押されたとき、あなたはどうするだろうか?日本と違い、自由な表現ができないイランで映画監督をし、世界では高い評価を浴びていながらも、国内では軟禁状態にもなったりと、政府に目をつけられているパナヒ監督はまさにそんな状態。。それでも彼が取った選択は、大好きな映画のために何としても映画を撮ってやるという選択だった。僕が観た前作の「これは映画ではない」もタイトルから挑戦的な作品でしたが、本作は何気ない日常を切り取りながらもドラマを起こしていくという、、これは映画ではないの??という作品になっています(笑)。

前にも何かで書いたと思うのですが、僕たちの日常はドラマで溢れています。街行く電車の中でも、バス停で待っている人の中でも、会社や学校でもドラマに溢れている。映画監督たちはそこからどういうドラマを取り上げ、脚色していくかというだけで映画になるかならないかの違いにすぎないと思います。本作はタクシーで繰り広げられる客たちの会話と、その周りで起こる劇(もちろん、ドキュメンタリー風ではありますが)を取り上げているだけなのですが、イラン社会の姿というだけではなく、客として乗ってくる人たちの周りの姿もよく目に見えてきて、やはり映画らしい空間づくりを上手くしています。

それに相まって凄いなと思うのは、イランの人たちの日常を描きながら、イラン社会がどういう形のものなのかとしっかり浮き彫りにさせてくれるところ。乗り合いタクシーという形も驚きですが、二重三重駐車をする交通網だけでもビックリですけどね(笑)