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人生タクシーのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
4.2
 タクシーがテヘランの活気に満ちた色鮮やかな街並みを走り抜ける。運転手は他でもないジャファル・パナヒ監督自身。ダッシュボードに置かれたカメラを通して、死刑制度について議論する路上強盗と教師、一儲けを企む海賊版レンタルビデオ業者、交通事故に遭った夫と泣き叫ぶ妻、 
映画の題材に悩む監督志望の大学生、金魚鉢を手に急ぐ二人の老婆、国内で上映可能な映画を撮影する小学生の姪、強盗に襲われた裕福な幼なじみ、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客達が繰り広げる悲喜こもごもの人生、そして知られざるイラン社会の核心が見えてくる。
死刑の是非について議論するシーン、海賊版で一儲けする業者と海賊版の業者から海賊版のDVDを買う人の会話、パナヒ監督を支援する人権派弁護士とパナヒ監督の会話、特にパナヒ監督と姪の会話の中の「先生は現実を撮れというけど、上映可能な映画にするには条件が多い。本当と本当じゃないってどう違うの?」という言葉から、表現や言論の自由が著しく制限されたイランの現実が見えてくる。パナヒ監督の幼なじみが強盗に襲われたこと、ラストに起きる出来事は、格差の差が激しいイランのリアルが余計に重く伝わってくる。ただ財布や遺言ビデオの件がちゃんと映画の中で決着していないのは、尻切れとんぼな感じ。パナヒ監督とお喋りで利口な姪の会話がユーモラスでこの映画のテーマをちゃんと表現していて、面白い。
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