みおこし

さらば冬のかもめのみおこしのレビュー・感想・評価

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)
3.8
先日数年ぶりに『ハロルドとモード』を観て号泣したので(笑)ハル・アシュビー作品を一気見決定。ニューシネマを片っ端から観てた時期があったのに、本作はなぜか漏れていたよう。

ノーフォーク基地勤務のベテラン海軍下士官バダスキーとマルホール。ポーツマス海軍刑務所まで、基地の募金箱から金を盗もうとした新兵メドウズを護送する任務を請け負った2人だったが、旅が進むにつれて次第に3人の間に奇妙な友情が芽生え始める。

観終わった後に「ああ、いい映画観たなぁ...」としみじみしちゃう珠玉の一本。向かう先は刑務所だけあって、作中どこか退廃的な空気が流れているけれど、決してそれだけで終わらない暖かさもあったり。
純粋かつ不器用な青年メドウズに対して、人生の楽しみや喜びを荒削りな方法ながらも手取り足取り教えてあげる先輩2人組。
これから8年間っていうかなりの長い時間を刑務所で過ごさなければならないメドウズにとって、少しでも希望の光を与えてやろうと苦心するその姿はとにかくカッコよくて。ジャック・ニコルソンが天才的なのはもちろんのこと、オーティス・ヤングの一見冷めたように見えるけど愛情深い姿にもジーンとしちゃいました。
メドウズ役のランディ・クエイドもピュアな感じが最高、女性との初体験が終わった後に「たぶん彼女は僕に惚れていたと思う」って言っちゃうところとか、なんて純粋な子なんだろうと胸キュン(笑)。

後先を考えずに進むことも大切で、今が楽しければいいんだ的な発想を持つことも時には必要なんだなと...!バダスキーの人生は楽しんだもん勝ちという生き方がとにかく真に迫ります。
ありふれた日常ほど幸せなものはなくて、海兵隊という極限の世界にいる3人にとってみたら、それはなおさら。
ケチャップたっぷりのハンバーガーを頬張ったり、バーで賭け事に興じてみたり、アーケードゲームやスケートをしてみたり。何気ない日々をやりたい放題3人で楽しむにつれて、いつの間にかその時間がたまらなく愛おしくなってゆく。だからこそラストの公園のシーンの切なさと言ったら言葉になりません...。
でもきっとバダスキーとマルホールとの出会いがなければ、メドウズの人生はもっと味気ないものになっていたかもしれない。そう思うと、ある意味希望に満ちたエンディングとも取れるのかもしれません。

バスのシーンで、メドウズが話すのを後ろからなんとも言えない表情で見つめるバダスキーのショットが特にお気に入り。

ナンシー・アレンがちょい役で出ててびっくり!
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