ピロシキ

母の残像のピロシキのレビュー・感想・評価

母の残像(2015年製作の映画)
4.6
劇場が明るくなってもしばらく座っていたいなあと思わせてくれるような作品には、そんな頻繁に巡り会うことはないけど、これは久々に食らった映画でした。部屋を暗くして改めて観直して、またもや染みました。

---

父、長男と次男、そして交通事故でこの世を去った母。
母の残像のズレはすなわち、残された家族に生じたズレだった。長男は結婚して家を離れ、次男は母の死以降、父に対して心を閉ざしたままでいる。物語が進むにつれて少しずつ、それぞれの母の残像が焦点を結んでいき、一つの家族が絆を取り戻していく……

邦題も悪くないが、Louder Than Bombsという原題が良い。戦場カメラマンだった母が戦地で聞いた爆音は、この映画ではほとんど鳴らなかった。本当はうるさいぐらいに叫びたいけど、堪えて堪えて、感情の爆発を心の中でなんとか留めている。静かに抑えられた思いの発露は、手紙となり、唾となり、そして遂には涙となる。

常に最高な大女優イザベル・ユペールへの称賛は割愛。なんてったって今回のMVPは次男っす。泣いたぶんだけ、笑えるように。そして笑ったぶんだけ、愛せるように。
ピロシキ

ピロシキ