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母の残像のTOTのレビュー・感想・評価

母の残像(2015年製作の映画)
4.4
母の不在による分断と再生。
戦場カメラマンであった母の死から3年。
父と息子2人の想いと記憶が、それぞれの角度から展開し、ぶつかり、ぎこちなく交わる。

クローズアップ、スローモーション、カラフル&モノクロの幻想的なカットはアート映画っぽさもあり、でも青春映画のようにきらめくシーンもあり、若々しいけど洗練された映像表現。
暖かい台詞とモノローグは耳に心地よく、この監督は言葉と、それを聞く観客を信頼してるんだろうなと思いながら観た。

優れた脚本と撮影、編集を活かしきるイザベル・ユペールをはじめとする役者たち。
ジェシー・アイゼンバーグの繊細な表情、揺れるブルーの瞳、柔らかい声音をこんなに堪能したことはない。
それと弟役デヴィン・ドルイドが輝いてる。
頼りなげな肩で爆発させる思春期の鬱屈と暴力的なパワー。
彼が片想いの女の子と歩く夜道の一連のシークエンスの美しさ。
交わした約束も明日には忘れてしまうかもと語った夜に、道を流れていった尿と彼が流した涙の美しさ。
私が忘れたくないと思った。

今回ヨアキム・トリアー作品初めて観て、非凡さ巧みさに驚いたので、過去作観たいけど映画祭とかでないと観れないのかな…それか海外DVDか。
私、叔父さんの作品が苦手なので少し観るの躊躇ってたけど、観て良かった。叔父さんより断然好きだった。
なんか、ごめん。
これからも追いかけますね。
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