河豚川ポンズ

アクアマンの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

アクアマン(2018年製作の映画)
4.7
敵も味方もとにかく見せ場しかないキマってる映画。
ジェイソン・モモアがもうアクアマンそのものにしか見えなくなってしまった。

海底に沈んだ伝説のアトランティス帝国の王女アトランナ(ニコール・キッドマン)と灯台守のトーマス(テムエラ・モリソン)の間に生まれた“アクアマン”ことアーサー・カリー(ジェイソン・モモア)。
しかし母親であるアトランナはアトランティスの追っ手により連れ戻され、アーサーは連れ戻されるきっかけとなった自分の存在に責任を感じながらもヒーロー活動を続けていた。
一方でアトランティスではアーサーの異母兄弟のオーム(パトリック・ウィルソン)が王座に就いていた。
彼は無責任に海を脅かす地上の人間たちを脅威に感じており、いつの日か海の覇王“オーシャン・マスター”として地上へと進軍することを企てていた。
そんな動きを察知したオームの許嫁でゼベル王国の王女メラ(アンバー・ハード)と、アトランティス帝国の参謀のバルコ(ウィレム・デフォー)は、王位継承権のあるアーサーにこの戦争を、そしてオームを止めるように依頼するのだった。


前評判からしてすこぶる元気で頭の悪そうなアクション映画だろうなあと思ってたら、その想像をはるかに超える密度と物量で押し寄せる、まさにアクションと視覚情報の大洪水。
監督は「ソウ」シリーズ、「ワイルド・スピード SKY MISSION」、最近は「死霊館」シリーズで超売れっ子のジェームズ・ワン。
ホラーもアクションもこなせる監督とは言え、ここまでとんでもない映画になるなんて思いもしなかった。
興行収入はすでにDCコミック原作の映画の中ではぶっちぎりの1位、でもそのストーリーの方向性は追い抜いてきた「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」や「ワンダーウーマン」「ダークナイト」とは大きく異なる、お気楽冒険活劇なストーリー。
アカデミーにノミネートされた「ブラックパンサー」ような、社会問題をうまく取り込んでいこうという最近の流れからすれば、全く逆の方向に突っ走ったタイプ。
でもMARVEL原作作品がそういった方向性なら、一方でDCは純然たるエンタメ作品としてあり続けるというのも1つの在り方なのかも。
惜しいのはこれが「スーサイド・スクワッド」や「ジャスティス・リーグ」の時に出来ていれば…というところ。
そうすればベン・アフレックのバットマンもきっともう少し見られたのかもしれないのに…

でもその中で立てるフラグとストーリーはとにかく膨大で忙しい。
アクアマンことアーサー・カリーの出自のためにまずは両親の出会いからスタートし、そこからアーサーのアトランティスとの関わりと立場、それと並行してヴィランであるオーシャンマスターの動向とブラックマンタのオリジンまで、そこからアトランティス行ったりアフリカ、イタリアと大忙しで、それらをすべて1時間ちょっとで手早く済ませる。
しかもそれが全くややこしくなく、とてつもなくテンポがよくて退屈さなんて一片たりとも感じさせない。
どう考えても普通の映画なら2までかかりそうな話だけど、エンタメに振り切ってる分面倒くさくて時間のかかりそうな話は敵の強襲で強制カット!
まるでソシャゲのストーリーみたいな分かりやすさしてる。
でもそれはそれとして2はやる気満々という貪欲さで本当に恐れ入る。

主役のジェイソン・モモアを始め、アンバー・ハード、ウィレム・デフォー、ドルフ・ラングレンにニコール・キッドマン、そして(声だけなら)ジュリー・アンドリュースと、とにかく脇役まで超豪華。
しかも脇役というだけで腐らせず、ニコール・キッドマンとアンバー・ハードもアクションするし、敵役のオーシャンマスターやブラックマンタにまで見どころを用意する好待遇。
オーシャンマスターなんかコミックまんまのデザインなのに槍をぶん回して戦っている姿はめちゃくちゃかっこいい。
やっぱりヒーローでもヴィランでもマントは絶対的マストアイテムと確信しました。
ブラックマンタも復讐に駆られた男でありながらコメディタッチな部分もあったりと、絶妙なバランス感覚の下に作られてる。
ヒーロー映画においてヴィランが愛されるキャラであるというのは非常に大きなファクターとなり得るが、この映画のオーシャンマスターとブラックマンタは十分それを担えるキャラクターだろう。
もちろんアクアマンもそれに負けないぐらいかっこいい。
映画だけでなくコミックにおいてもDCのヒーローの象徴性はまさに神々しさにあるが、アクアマンにもそれは満ち溢れていて、普段のアクションも死ぬほどかっこいいけどここぞという時の見せ場では、さらにそこから男前度合いがアップ。
そしてやっぱり槍をぶん回してるとかっこいいし、そんなところにオーシャンマスターとの戦いが始まるとなれば、もうこっちの脳みそがパンクする。
もうこの先アクアマン役はこのジェイソン・モモア以外に考えられないでしょう。

こんなに面白いのにTOHOシネマズでのIMAX上映は「ファースト・マン」となぜか「メリー・ポピンズ リターンズ」だけだし、どう考えてもMX4Dなんかやってないでもっとこっちに力を入れてくれよ…