ゆうすけ

アクアマンのゆうすけのネタバレレビュー・内容・結末

アクアマン(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「DCエクステンデッド・ユニバース」6作目。『ジャスティス・リーグ』で登場したアクアマンが主人公の映画になる。

素晴らしい水中の描写。どうしても暗くて地味になってしまいがちな水中だが、海底人特有の「海中を明るく見渡せる目」の設定があることで、海中の魚や海藻、クラゲなどが明るく色鮮やかに光り、その美しさに圧倒される。そして、何よりも登場人物達の海中での動きに度肝を抜かれる。無重力空間ではあるが、宇宙とは違う。厳密に言えば、海中は重力と浮力の両方がかかることで疑似的な無重力空間が生まれる。さらに、そこには水の流れや抵抗が存在する。すなわち、宇宙での人の動きとはまるで異なるのである。様々な自然の力を再現することが叶った本作の技術力たるや圧巻だ。特筆すべきは、髪の動きだ。水の動きに合わせて揺れる水中独特の髪の動きを、よくここまで再現できた。

様々な映画のオマージュも見られた。全体を通してはやはり『スター・ウォーズ』。海中での光は、宇宙の星々を連想させる。敵兵の白い全身スーツも、ストームトルーパーを想起させ、さらに槍での戦闘シーンもまるでライトセーバーの戦いのようだった。様々な種族や怪物が出てくるのもそうだし、甲殻類の種族との戦争も『スター・ウォーズ』感満載。さらに、最後の戦いでオームが乗っていた大きな怪物に食べられそうになり、海上へ急ぐアクアマンのシーンも、『ジュラシック・ワールド』もしくは『MEG ザ・モンスター』のようだ。砂漠に沈んだ都市も、まるで『インディ・ジョーンズ』。アクアマンが子供の時に行った水族館で、魚達と心を通わすシーンは、『ハリー・ポッター』で、ハリーが蛇と会話するシーンを思い出した。様々なエンターテインメント映画のオマージュが、より観る者をワクワクさせる。

アクアマンの立ち位置は、MARVELの『ブラック・パンサー』や『マイティ・ソー』と被る。ブラック・パンサーの座を狙う従兄弟のキルモンガーや、ソーの王座を狙う弟ロキと同じように、王座に固執する弟オームを兄であるアーサー(アクアマン)という構図。身内による王位の奪い合いは普遍的であるのだろう。

父親と仲が良いヒーローというのも珍しい。例えばバットマンやスーパーマンの両親は亡くなっているし、MARVELでもスパイダーマンにとってのベンおじさんも亡くなっている。というより、ヒーローというものは大抵身内の死によって自立し、精神的に成長する。アクアマンの場合は、それが母親だったのであろうが、彼女も生きていた。アクアマンは、誰かの犠牲によって得た正義の心ではなく、真に自らの奥底にあった正義感によってヒーローになるという珍しいタイプだ。やはりそれは、海底人と地上人。どちらの血も持っているからこそ、その和平を望むことができたのだろう。相手の立場になることこそが、人を慮る唯一の方法だ。

アーサーの母親アトランナの家庭での戦闘シーンは圧巻。ハイアングルを中心に自由自在にカメラを動かして描く。このカメラワークでのアクションが本当に素晴らしい。人生で観た映画でのアクションシーンでトップレベルだ。

ずっと母親アトランナとメラが対比的に描かれる。アトランナは金魚を食べ、メラはバラを食べる。そして、何よりも彼女達は王女という立場でありながら、祖国を裏切る。さらに、二人とも決められた結婚相手がいたのにも関わらず、別の男性と恋をする。母親に似たメラに恋をするというのが、社会心理学の分野における青年期の母子関係と恋愛関係の共通性の検討において報告されている内容と同じなため面白い。

正直、ブラックマンタはあまり好きじゃない。フォルムがダサいし、目からビームくらいなら、スーパーマンもシャザムも出せる(しかも機械に頼らず)。復讐に燃えるのはいいが、どうもあの格好が好きになれない。

ストーリーは、王道冒険もので新鮮味はなかったが、やはり王道というだけあって普遍的に楽しめるものだった。ストーリー展開にもっとあっと言わせるような仕組みがあればより良かったかもしれない。
ゆうすけ

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