nagaoKAshunPEi

エベレスト3DのnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

エベレスト3D(2015年製作の映画)
4.0
ひたすら「地獄」
映画観てて、死を悟らされたのは初めてかもしれない。それぐらいエベレストという山の過酷さとこの映画のベースとなった遭難事故の凄惨さが感じ取れた。

この映画を観るまで、1996年のエベレスト遭難事故のことは全く知らなかったし、事前情報も予告編ぐらいでほとんど頭に入れずに観たので、ここに出てくるメンバーはほとんどが死ぬんだと悟った時点からがほぼ地獄。
嵐が近づいてくる。酸素がない。凍傷で手が動かない。視力がほぼ無くなる。ブリザードに襲われる。寒い。ひたすら寒い。
遭難した当時、登山者が味わっていたであろう地獄のような想いをひたすら追体験させてくれる。
次々に倒れる登山者たちを観て、はぁー、もう早く帰りたい、寒い、苦しい、という想いを疑似体験させられただけでも、めちゃくちゃ価値があると思う。

あくまで実話をベースにした話なので、余計な脚色や映画的に救いを入れないところは監督自身がこの事件を映画を通してより実直に伝えるということに責任を感じているからだと思うし、なにより亡くなった人たちへの弔いもあるんじゃないかと思う。

ただ、登頂に至るまでの場面があまりにもあっさりし過ぎているように感じたので、登頂は登山者にとって一番の至福の時だと思うから、もっとより感動的に描いても良かったのかなと思う。

キャラクターは、自業自得ではあるにしても、彼らなりの登山にかける想いがあるし、少ないけれども彼らの動機は描かれていたんじゃないかと思う。

映画のなかでもあったように、家族をめちゃくちゃにしたり自らも死ぬかもしれないというリスクを冒してまで「なぜ、山に登るのか?」という問いに対し、冗談めかして「そこに山があるから!」なんて言ってたけど、人間の行動原理の根底は間違いなくそこにあると思うし、それ以上でもそれ以下でもない彼らを駆り立てる何かが山にあるからなんだと思う。
彼らが山にかける想いは、観てみるまで面白いかつまらないかもわからない映画を、お金と時間を浪費して観に行く僕なんかとなにも変わらないんだと思う。

間違いなく劇場の大スクリーンで観るべき一本。
nagaoKAshunPEi

nagaoKAshunPEi