ナガノヤスユ記

エベレスト3Dのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

エベレスト3D(2015年製作の映画)
3.8
なぜ登るのかと問いかけられて、なぜ作るのかという自問自答だけを残してしまったかのような作品。それだけに踏み込みは弱いけど、いわくつきの実話に対する適切な距離感を取るよう努めた結果であり、その実直な姿勢には好感がもてる。
フィクションで済まされるわけのない製作道程の過酷さが、この映画に携わる人間を、事故の非当事者からエベレストの当事者に変えてしまった。豪華キャストが作り上げたそれぞれのキャラクターは、ただの善人でも悪人でもなく、安易なロマンチストともリアリストとも違う、どこまでも人間臭いクライマーに見えた。
今なお山間にこだまし続ける問いかけに、何かの答えや救いを提示したわけではないけれど、ここにはエベレスト商業登山に関わってきた多くの人の夢や悔恨の情念が確かに掬い上げられていたと思う。
まざまざと観終わって、パンフレットまで読み切ったあたりで途端にジワジワくる、この知的興奮高揚の後追いこそ誠意ある伝記映画の証ではないでしょうか。