えむえすぷらす

エベレスト3Dのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

エベレスト3D(2015年製作の映画)
5.0
史実に基づいた再現ドキュメンタリー映画。
作中登場したクラカワーはこの遭難事件で本「空へ」を書いているので取り寄せ中。他にも関係者が書いた本がありますが、どれも事件後しばらくして出ていて今は古本か図書館でしか読めない。(ブクレーエフ「デスゾーン」は絶版で図書館のみ。ウェザーズ「生還」は復刊されてます。)

本作は実際に起きた事を描いてますが、映画化に際して脚色による改変はあります。一番大きいのは台湾隊の割愛でしょうか。
また映画として描こうとしているため説明的なナレーションや演出は皆無です。そのために難波康子さんらの最期の場所と最終キャンプの位置関係がわかりにくくなってます。(2回目見ていると俯瞰ショットで補っていたので注意していれば分かる事を確認)
そういった問題はあるんですが、何が起きたのか描こうと最新の映画技術注ぎ込んで出来た作品なので見ていて当時の事件への興味は掻き立てられました。

タイトルの「エベレスト3D」ですが見ていると3D上映見越しての撮影はされてないように見えます。私は3D字幕版で見てますか夜のシーンが多く見ずらいので字幕2Dがベストかなと。
字幕版の方が「Gone」の言葉の重さ体験出来ますから。

追記。結局4回見ました。IMAX版はコントラスト高く見やすい。また吹替版も良く出来てます。
オーソライズされた形の原作は存在してないようですがエンドロールでウェザーズなどの本のクレジットが出ているので参考図書はいくつかあるようです。「空へ」「デスゾーン」は含まれているのか気になります。
なお「デスゾーン」原著のKindle版にはマウンテン・マッドネス隊のデブリーフィング文字起こしやクラカワーからの批判と反論の時系列経緯が載っています。クラカワーの攻撃はアナトリがアンナプルナにいる時にも繰り広げられている事がわかる。またヤマケイ文庫で復刊した「空へ」には写真追補版後記を追加掲載するようにクラカワーに求められたとのことで載っている訳ですかブクレーエフのKindle版のクラカワーからの批判と反論のパート読まないと意味が分からない一方的な主張の記述になっていて何かなんでも自身のジャーナリストとしての正義を強要する偏狭な人物に私には映る。あの本、他人に厳しい事はわかりますが、自身の描写はどうなのか?と思うところはありますし。

本作の主人公は誰かといえばエヴェレストであり96年遭難事故でのアドヴェンチャー・コンサルタンツ隊とマウンテン・マッドネス隊の2隊にあるのは明らか。その中で比重が高いのはAC隊ですが遭難者5名のうち4名が同隊のガイドと顧客隊員だった事を考えれば当然の結果だと思う。
本書がオーソライズする形で原作を求めなかったのは誰かの一方的な主張、視点を取るのではなく事実関係の明らかな部分を中心として第三者視点で描く事を選択している結果なので「空へ」「デスゾーン」など名前を挙げなかった事は当然の成り行きだった。
なお「空へ」は事故の翌年テレビ映画として放映されていてブクレーエフの本のKindle版にはデウォルトがみたアナトリの反応が記されている。「Everest Catoon」と言ったとのこと。
クラカワーの後記の最後にアナトリの反応「わかってないんだな」という一言が載っているのですが、彼が感じていたであろう無理解への絶望からすればクラカワーはよくこの一言を載せられたなと思う。
という事でこの映画が描いた事件の余波は未だに続いています。
映画に関してはブクレーエフとロプサン・ジャンプ・シェルパの二人のその後について触れられなかったのは惜しいところだと思った。