みゆ

エベレスト3Dのみゆのレビュー・感想・評価

エベレスト3D(2015年製作の映画)
4.7
2015.11.17(215)
劇場・3D字幕


まずエベレスト級の登山とは、こんなにも何人もの助けを必要とし、こんなにも命懸けで他者を頼り、こんなにも命懸けで他者に頼られ、自らの行動・判断が他者の命を簡単に奪ってしまうと認識した上で行われているのだという事実に驚いた。迷惑かけて当たり前!の世界なんだなぁ…私には想像しか出来ない世界だ。

人間は程度の差はあれ、スリルがなくては生きられない生物だと思っている。私は趣味の写真撮影で「手持ちのカメラで開放F2のSS15という設定で屋外に揺れる木の葉にピントを合わせ高価なフィルムで撮影する」くらいのスリルで十分過ぎるほど満足出来るのだが、命懸けの雪山登山を何度もしないと生きている実感が得られない人たちもいるのだろう。それは本能と、それに突き動かされ積み重ねてきた経験などにより、さらなる高みとスリルを求めて渇望するというものなのだろうな。

海沿いの町で生まれ育った私からすると、深いところへ長時間潜るには酸素ボンベが必要で、酸素がなくなることが分かっていながら浮上してこないなんてことはまずあり得ないのだが、エベレスト登頂に挑む人たちは"酸素が足りなくなる前に戻る"ということが出来なくなってしまうものなんだね。

今作が良かったのは、エベレスト登山の最初から見せてくれたところだ。まず空港から始まってネパール入りし、ネパールの町や滞在ホテルでの様子、そしてどんな流れで山へ入るのか、出来ることと出来ないことなどを丁寧に見せてくれる。

参加者がネパールの寺院で一人一人祈祷をしてもらうということも知らなかった。ネパールの寺院の負担たるや…生きて帰ってくる人にも、亡くなって山に遺体が遺されたままの人にも、終わりのない祈りを捧げてくださるんだろう。エベレストに登る方は、初めて会う方の為に祈りを捧げ続けてくれる方々の存在を忘れてはいけないと思う。

物語の進行で、原作を読んでいないと分かりにくいんじゃないかなぁと思うところがあった。映画では色んな想定外のイレギュラーが起こる。その中には責任を問われるべき人物もいるはずだが、映画の中ではそういう責任の所在をボカしてある。それで正解だなと思った。どんなに準備をきちんとしていても、イレギュラーが起こる可能性はあるんだから、お互いを信頼して命懸けでサポートし合って取り組んだ以上、観客に犯人探しをさせる必要はない。

計画はほんの少しでも予定と違えば命取りになる。そのことは登山者全員が把握しているはずだが、いざその場になると人間の精神とは脆いものだ。鍛えられていたはずのガイドでさえ、ふと情にほだされてしまうことがある。だがそれは全くもって愚かなことだ。エベレストという山への畏怖を絶対に忘れてはならない。自然は人間の力でねじ伏せられるものではないのだ。

今回、助け合いや団結ということについて真正面から考えさせられた。他者に頼るということ、そして他者を助けるということの両方から、迷惑という言葉を切り離すことは出来ないし、そこにかかる負荷を人はきちんと理解して生きていかなくてはならない。その上で初めて集団行動は成り立つのだ。