せんきち

エベレスト3Dのせんきちのネタバレレビュー・内容・結末

エベレスト3D(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます


怖い。怖すぎる!


96年のエベレスト大量遭難事故の映画化。


実話の映画化だからネタバレもクソもないんだけど、最も怖いのは主人公の生死を分けた選択が”倫理的に全く問題のないもの”だったこと。


主人公のロブは商業登山のガイド登山隊の隊長。何しろ相手はエベレストなので料金も高い。数百万の資金が必要だ。多くの顧客は金持ちなのだが、顧客の一人ダグは違った。仕事を掛け持ちして資金を貯め、足りない分は地元の子供達から援助を受けた。過去にエベレスト頂上付近で断念したダグにとってこれはラストチャンスなのだ。エベレスト登山にはルールがあり、登頂部到達のタイムリミットは14時(状況により異なる)なのだ。遅い時間に登頂部に到達したら夜間に下山しなければならない。危険過ぎるのだ。


他の顧客が登頂に成功する中、ダグは遅れてしまった。ロブはダグに「残念だが時間が遅い。登頂を諦めろ」と言う。ダグは「絶対に嫌だ。これがラストチャンスなんだ」と涙目に訴える。彼の胸には資金援助した子供達手製の旗が入っているのだ。これを登頂部にさすまでは帰れないと。ロブはダグに付き合ってしまう。


ここが彼らの生死を分けた点だ。後半は自然の猛威と不幸な偶然が次々と襲いかかり、彼らの希望を少しずつ奪っていく。結局ロブもダグも死ぬのだが、ロブの死の描写が恐ろしい。衛星電話で妻の励ましを聞きながら、ついに心折れ遺言を伝えてしまう辺り...何と言っていいか。


実話遭難ものの映画があって遭難の理由にはそれなりのミスがある。『八甲田山』なら杜撰な計画と地元民の忠告無視。『パーフェクト・ストーム』なら海図を甘く見たこと。本作の場合も登頂は14時までというルールを破ったからなのだが、果たしてダグの訴えに「駄目だ」と断れるだろうか。私達は結末を知っているのであそこで冷たくでも断るべきだったと思えるが、当事者でダグの事情を深く知っていたらそれでも断れるのだろうか?※私もロブと同じ決断をするだろう。だから怖いのだ。


※ロブは登山前に顧客達と長期のトレーニングを行い、彼らの事情を深く知ることになる。


ロブのラストカットは全てが終わった後、登頂部付近でオブジェの様に凍りついた遺体だ。エベレスト登頂部は気温が低すぎて微生物も存在しない。土に還ることも出来ず、ずーっとそこに居るのだ。山のルールを破った報いなのだろうか。罪というには重すぎるし理不尽過ぎる。まるで何かの呪いのようでもある。


本当に怖い怪談は因果応報はかみ合ってなかったりする(事件に無関係なのに重い報いを受ける)のだが、本作にもそういうテイストがあって非常に怖い。字幕版だと登山服と髭面ばかりでキャラの見分けがつきにくいので吹替版をお勧めする。小山力也、堀内賢雄、山寺宏一など超豪華!