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オーバー・フェンスのnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
4.5
「青春」という言葉が、若者という限定された年代に向けられた言葉でなければ、この映画は紛れもなく中年による「第二の青春」映画だろう。
函館の職業訓練学校の淡白なスクールカーストを描くのと同時に、過去に傷ついた中年男性が第二のモラトリアムを経て、自己否定から自己肯定へと到達する様を情景たっぷりに描きだした傑作だった。

主人公の白岩(オダギリジョー)をはじめ、自らの内にある、壁(フェンス)を乗り越えんともがく人々。しかし、その壁がどこにあるのか、いったいなんなのか。『オーバー・フェンス』にでてくる人間は、皆その壁を探しあぐねているように見える。
ただ、その登場人物たちを突き放したりしない。
おまえたちはけっして特別じゃない、ただどん底でもない、たまにはホームランだって打てるんだよ、と良くも悪くも「間」に生きる人間に向けられる山下敦弘の優しい眼差しが滲み出た作品だった。
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