シロ

オーバー・フェンスのシロのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
3.8
「無難」に生きていきたかったが、一般人が成し遂げるそれすらも達成できなかった自分は社会の底辺だ、という自意識が人を破滅させるのだと思った。


初めて劇中に苛立った気がする。

聡がキレるシーンで、理不尽で利己的な怒り方をする人間が大嫌いだから苛立ったのだけど、それは聡の愛情の薄い人間への憎悪ときっと同じだ。結局人は、自分が育っていく上で得られなかったことに対して最も大きな執着を持つものなのだと知る。

人間は多面的だから、「こう在りたい」と思っているものと相反する面も絶対に持っている。それを拭い去ろうともがいては引きずり降ろされるうちに、自分の頭がおかしくなってくる気がするのだろう。

聡の誰かとの深い心的な繋がりへの渇望と、自由の獲得という悲願は、きっと彼女にとって相反する二面で、その矛盾が彼女を蝕んだのだと思う。「今日から変われるかもしれないって思ったら、もう死んだように生きなくてもいいって思ったのに」が心に響いた。

私は理不尽な事物に腹が立つ。だからこそ私をこの世で一番苦しめるのは合理的になれない自分だ。そして理不尽な自分を他者から指摘されることもあるが、言われた時に苦しいのは、きっと彼らに言われたからではない。自分のいやな部分を再確認するからだ。要するに、自分が一番自分を許せなくて苦しんでいるのだと思う。

対人もそうだけど、対自身への罪意識って辛いし厄介だよなぁって。とっとと抜け出さなきゃ。私もフェンス越えなきゃ。

音楽と構成と象徴化の仕方はドツボだったけど、脚本と演出もうちょっと頑張ってほしかった!松田翔太は年々薄っぺらい役どころ増えてるが大丈夫か…?(´・_・`)
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