じゅんP

オーバー・フェンスのじゅんPのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
4.2
子供の頃、遊びで何かのチーム分けする時に「要〜る要〜らないっ!」ってじゃんけんあったんですよね。で、大人になっても同等のものは普通の顔してそこら中にあって、無邪気さの代わりに巧妙さや狡猾さで覆い隠されてるから麻痺してたり、麻痺してる気になれてたりするんですけど、そんな風に人が人の心を殺す時、どんだけの自覚があるんだろうってのが何度も切り取られていた。

自分がそう思ってる・思ってないに関わらず、その恩恵を受けてる・受けてないに関わらず、根底に流れてしまってる(常識)の存在を受け入れた日常はどう転んでも居心地悪くて、例えば北村有起哉に「他所で飲み直しましょ」って言われたオダギリジョーがカット変わって子供に起こされるとことか、自分の心も一緒に殺されるかと思った。でもその後の「お魚見る?」からの朝ごはんの流れに、自分の心も一緒に救われた。

人が惹かれ合うとか離れるとか、磁石のS極N極と違って明確でも一律でも永遠でもなくて、相手が培ってきた全属性とそれに伴う今現在この瞬間の立ち位置なんて見えるわけもないから平気で人の心を殺してしまうようなことももちろんあるんだけど、そんな面倒くささを悪いことばかりじゃないってちょいちょい言ってくれるのが良かった。揺るぎないとか絶対とか、そんなの信用できないってことをちゃんと両面、見せてくれる。

この映画は、ハッピーエンドじゃなく、単発のハッピーで幕を閉じる。自分なりに敏感に、積み上げていくしかないんだ。
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