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オーバー・フェンスのsaorinoのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
3.6
「ぶっ壊れなきゃ、生きてけない。」訴えるように大きく羽を広げて舞い踊る姿は、不気味にも見える一方で、彼女の危うげな美しさを映している。さまざまな事情を抱えた人たちが過ごす、職業訓練校。そこに通う仲間たちの日常と、ホステスとのひと夏を描く。

常人には理解できない彼らの言動は、初めは”変わってるね”と物珍しく思われるが、そのうち”変な人”と耳打ちされるようになるのが常だ。つぎからつぎへと内から湧き出る得体の知れない感情に、24時間襲われ続けるのだからしょうがない。

「ぶっ壊さなきゃ、生きてけない。」居場所のない悲嘆、不安定さ。アンバランスな精神と生活。背負った荷物の多さに絶望しても、出口のない道を進んでいるように見えても。信じるところからはじめればきっと、自分よりずっと高いフェンスを越えられる日がくるはずだ。
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