MasahiroOhta

蜃気楼の舟のMasahiroOhtaのレビュー・感想・評価

蜃気楼の舟(2015年製作の映画)
3.5
予告編は観てたんだけど、モチーフのせいもあったのか勝手にリアリズムの映画だと思って観たらだいぶ違った。

竹馬監督は前作を観られておらず、評判の高さだけ見知っていたので、どこをどんな風に評価されてるんだろう?という興味もあって観たんだけど、まず画の構図がカチッと決まっていて、どのシーンも美しい。
今作はモノクロ(正確には「極端に彩度を落とした画」ということなんだろうけど)のシーンが多いせいもあるのか、画の美しさが際立ってたと思う。
そして生活音の音圧の高さと音楽の美しさも印象的だった。普通、生活音って敢えて高い音圧で出すときって不快感を観客に与えるためだったりするんだろうけど、不思議とイヤな感じはしなかった。

住所不定・無職の老人を囲って彼らの生活保護費をちょろまかすことを生業とする「囲い屋」をモチーフにした、「意味をもって生きる」ということフォーカスした作品。
登場人物の大半がその「意味をもって生きる」という舞台から降りていたり敢えて無視していたり…という状態の中で、主人公は自分を捨てた父親と全く望まないシチュエーションで再会してしまう。
そして主人公の意識は「生と死」若しくは「現実と幻想」とおぼしき2つの世界を行き来し始める。映画では「生(または現実)」がカラー映像で、「死(または幻想)」がモノクロ映像で表現されるが、後半のある出来事をきっかけに2つの世界が逆転してしまう。

父親の口にする言葉といい象徴的に現れる「舟」といい、解釈の余地が広いパーツがとても多く、正直、どう観るのが正解なのかは1回観ただけでは分かりづらかった…
ただ、伝わってくる「表現したい核」みたいなところはビンビン伝わってきた。もう一回観よう…
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