バナバナ

この世界の片隅にのバナバナのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5
すずは昭和19年に広島市内から呉にお見合いで嫁に来たが、
嫁ぎ先の両親や夫も優しい人だし、何しろ夫は戦地に獲られている訳ではなく、毎日家に帰ってくる(あのラストら辺のあの子は、なんで男の子ではなく女の子なんだ!と、当時なら跡継ぎ問題で激怒する家の方が多そうだが、すずの嫁ぎ先は大丈夫)。

また、すずのキャラクターは、現代でいえばドジっ子なのだが、
それでも、貧しい食料事情の中から工夫して料理を作れるし、
着物からもモンペや服を上手に仕立てられるしで、現代のドジっ子キャラクターと比べると雲泥の差がある。
おまけに彼女は絵が非常に上手いのだ。

軍港がある町に嫁いだにしては、主人公は結構恵まれていて幸せそうだな、と思ってずっと観ていたのだが、やはり昭和20年に入ってくると、涙無くしては観れなくなった。

すず自身も大事なものを失くしてしまったが、他にも、気難しくて意地悪そうに見えた義姉の人生も、同じ女として凄く辛かったし、
すずの妹も、まだ若くて好きな人が居たのに原爆の犠牲になってしまったし、また、小さい頃、食い差しのスイカを盗み食いしたあの少女も、エンドロールでその生い立ちがあっさり出てきたが、当時の一般的な女性と比べても、貧しさ故の辛酸を舐めてきた筈で、彼女は呉の大空襲の後も生き延びられたのだろうか?
無事生き残って、後妻でも何でもいいから玉の輿にでも乗ってくれればいいのにと、彼女のその後の事も気になった(あの境遇では、かなり難しいだろうが)。

最近だとウクライナの様に、日常の幸せというものは一瞬で無くなってしまうかもしれない。
未だに世界の至る所で戦闘が行われていて、すずや彼女達の様に人生を狂わされてしまった人がたくさん居る。
その人達が少しでも、明るい未来を歩いていける事を願う。
バナバナ

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