ゆっけ

この世界の片隅にのゆっけのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5
戦争映画というジャンルを超えた普遍的な価値を持った傑作!

今年は、
『君の名は。』
『聲の形』
に続き、日本のアニメーションの傑作が続いてます。
(『クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』も好きです)

広島市にいた絵が得意な少女・浦野すずの幼い頃からのお話に始まり、
昭和19年(1944年)、呉に住む青年・北條の元へ嫁ぎに行ってから、1年までを描きます。
当然、あの忘れてはならない不幸まで描かれています。

お話の7割は日常が描かれています。
ホワーっとのほほんとしたすずが主人公ですし、
4コマ漫画を見ているかのように何度もくすっと笑えるシーンが出てくるので
何だか見ててほっこりします。

すずの、「ありゃー」と言って、目が三本になる場面が良いですよね。癒されます。

戦争のさなかでも、そこで暮らす人々って案外今の人と変わらないんだなって思います。
個人的に、すずが少ない具材で、料理を工夫して作っていくシーンが大好きです。まな板をあごの下に入れてバイオリンを弾くようにするシーンとか。

絵の表現が本当に優しいのが印象的なのですが、
あの事件が起きてから、絵の印象が変わります。とても怖い。こんな風な絵の見せ方があるのかというほど、素晴らしいのですが。

そして、義姉の径子とすずとの対比。
自分の好きなような選択をして生きて来た義姉の径子と選択がなく生きて来たすず。
相容れない二人ですが、二人の行き着く先というか、径子の「選択」についての考え方が深くて胸に突き刺さりました。

原作は読んでいません。
正直、一度観ただけでは、初めと最後のあまりにもかけ離れたギャップにただただ茫然として、感動する余地がありませんでした。
映画を観終わった後に、沢山の人の映画の感想を読んでいくにつれて、
深く心につのって、感動するそんな映画だと思います。

以下の考察記事おすすめです。

映画『この世界の片隅に』描かなかったことの大切さ(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
https://kagehinata-movie.com/thecorneroftheworld/

何度も観るべき映画だと思います。
『君の名は。』みたいに、感動するポイントがわかりやすいストーリーではないので、
決して、みんなにはオススメできませんが、20、30年後も残り続ける傑作だと思います。

中学生の授業でぜひ扱ってほしい映画だと思いました。
(性的な描写多いので、小学生だと少し理解しづらいかなと思います)
考えさせられますし、一度観ただけでは理解できない部分も多いとます。
そういう意味で議論が生まれやすい映画です。

戦争を経験したことのない現代に生きている私たちと当時戦争の中生きてきたひとたちの違い。

決定的に違うのは、生きる力(覚悟)だと思います。
自分ではどうしようもない「結果」に対しての考え方。


「この世界の片隅に」。
ほんの少しでもいいから自分の居場所をみつけて、その場所で精一杯に楽しく強く生きていきたいと思える映画です。
ゆっけ

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