せーじ

この世界の片隅にのせーじのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.9
2016年11月末に、自分はこの作品を観て衝撃を受け、その衝撃を感じたままにこの文章を書きました。
この作品と出会えたからこそ、映画というものの奥深さや映画を観る楽しさを知ったと言っても過言ではありません。
この場で好きなように感想を書き、同時にいろんな作品のいろんな感想を知り、いろんな映画館でいろんな映画を観る楽しさを知り、いろんな映画から世界のありさまを知る大切さを知ることができたので、言ってみればすずさんたちは自分にとっては恩人のような存在なのです。
それはおそらく、「いくつもの片隅に」を観た後でも変わらないことなのだと思います。

※※

ユナイテッドシネマ豊洲で鑑賞。
8割~9割くらいの客数だった気がする。

観終わったあと、何とも言えない暖かな気持ちに包まれ、溺れた。帰りの電車でもそれは残り、その夜はなかなか眠れなかった。
数週間過ぎた今でも、この暖かな気持ちは、自分の心の中に残っている。映画作品に触れてこんなことになったのは、もちろん初めての経験だった。

どうしてこのようなことになったのだろうか。
それはきっとすずさん達の存在が、あまりに実在に近かったからだと思う。監督による執念としか言いようのない設定考証も、のんさんをはじめとする演者の演技も、すべてが登場人物を実在たらしめる為になされていたからだろう。

驚くべきことにこの物語はフィクションである。

なのにまるで、すずさんは今も生きていて、彼女の当時の様子をそのまま観たような気持ちになることができた。
彼女の生き方に寄り添えたからこそ、暖かな気持ちになれたのだと思う。
これこそが究極のイマジネーションであり、創作表現の姿なのかもしれない。すずさんが、絵を描くことで生命無きものに生命を与え、周囲の人々の心を満たしたように、この映画そのものも、すずさん達とその世界に実存を与えたことで、観た者の心を満たしたのだ。
自分が今も抱いている暖かさは、きっとそういうものなのだと思う。

だから自分はこの作品を、すべてのクリエイターに観てもらいたいと思う。創作表現の根本的な意味と喜び、リスペクトが描かれているからだ。
そして自分は、自由に創作表現ができる世界で生きられることに感謝しつつ、自分が成すべき創作表現についてより深く考えていきたいと思う。
せーじ

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